無料ブログはココログ

« 中島みゆき「ファイト」 | トップページ | 渡辺保「渡辺保の歌舞伎劇評」 »

2010年8月26日 (木)

井上和雄「シューベルトとシューマン」

415wydibnhl  井上和雄「シューベルトとシューマン」。この人、経済学者かなんかなのだが、趣味で室内楽をやっていて、その経験からモーツァルト、ハイドン、ベートーヴェンの本を書いていた。それが、音楽の響きと受け取る人の印象の起こり方を個人レベルで記述していたのに好感をもっていた。とくに、クラシック音楽について書かれたものは、音楽学的薀蓄か楽譜ばっかりで文章は何を言っているか分からない、個人がどう感じるのは自明といわんばかりのナイーブな認識しかないものや、個人の思い入れを音の響きとは無関係にダラダラ書き連ねる、どうしてそう感じたか全くわからないものや、作曲家や演奏家の伝記をなぞっているだけのものが大半で、吉田秀一のような半端な文章がまともな部類に入るという淋しい状況で、音の響きとその印象がとにかく結びつくという稀有な本だった。本を読みながらCDを聞くと、成る程書いていることが理解できた。ただ、それに共感できるかまた別だが。共感以前の本が多かったのだ。それで、この本も期待して読んだ。期待はどうだったか、半分当り、半分外れのような内容だった。原因としては、この辺になるとアマチュアでは演奏できないのか、モーツァルトやハイドンでは生彩のあった音の響きの書き方が活き活きとしていなかった。その分もうひとつ消化不良の印象を受けた。また、本人がロマン主義に対して屈託を持っているようで、素直に印象を書きにくく、持ってまわったような感じがした。また、この二人の作曲家は弦楽四重奏に積極的ではなかったせいもある。でも、シューマンを知的というのはユニークだが、なんとなく分かるし、シューベルトの晩年の見方もそれなりに理解できる。作曲家の精神分析なんかの引用に頼ったり、ちょっと残念だったが、それでも、クラシック音楽についての著作としては、いい本だと思う。

« 中島みゆき「ファイト」 | トップページ | 渡辺保「渡辺保の歌舞伎劇評」 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 井上和雄「シューベルトとシューマン」:

« 中島みゆき「ファイト」 | トップページ | 渡辺保「渡辺保の歌舞伎劇評」 »