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2010年8月25日 (水)

「メイド・イン・ジャパンは終わるのか」(3)

そろそろまとめに入る。半導体、携帯電話あるいはデジタルカメラやゲーム等といったエレクトロニクス産業を中心に、現在日本企業が直面している問題は、不景気といった一過性のものではなく、90年代以降の半導体技術、デジタル技術の進歩そしてグローバリゼーションの進展によって、一方で製品の開発や生産の対象が急速に拡大し単に品種を増やすだけでなくときには相互に矛盾するような多種多彩な対応が大量にしかも急速に求められ、他方では個別の製品の枠を超えて普遍的な機能を抽象化によってピックアップし超LSIのような集積回路に担わせることによって完成品よりもデバイスが主導権を握っていくことが進んだ。このような産業システムの質的な変化に対応する能力が企業活動の成否を決するようになっていった。そのプロセスにおいて、日本企業は遅れをとり、迷路に嵌っていった。

日本のメーカーは特定の顧客を念頭に製品や技術を個別最適化するものづくりのための「摺り合わせ能力」に秀でているが、このことが、先に説明した産業システムの質的な変化への対処を遅らせたといえる。それが典型的に現れているのがエレクトロニクス産業といえる。

従来のものづくりはパソコン等や家電製品の最終製品が顧客のニーズを汲み取り、主導してきた。しかし、このような事態が進行して、集積回路がどの製品にも搭載され、しかも機能の中核を担い、これに合わせて部材が作られるようになると、最終製品ではなく、集積回路がものづくりを支配するようになってしまった。その結果、完成品をつくる家電メーカーやパソコンメーカーはものづくりを支配できなくなった。

しかし、日本企業が世界で強さを持ち続けている産業、自動車や産業機械は、構造上そのような傾向が比較的現れにくく、日本の特異な「摺り合わせ能力」を生かせる。このように市場の構造を捉えなおして、ポジショニングを見直し、これに応じて戦略を練り直すことが重要と説く。

これからの日本企業の選択肢は学者の論文の常として、こんなものかなぁというところだ。しかし、日本企業の経営について、かつての強みゆえに、状況変化のスピードについて行くことに遅れるという構造的な分析は説得力がある。実は、ここ数年が転換期にあり、日本企業が内在的にも、外的な事情からも、柔軟に変化していく努力を怠ってきたのではないか、という実感は現場レベルでもあったのではないか。これに対して、言葉を与えてくれたという感じがしている。ひとつの視点で、このように考えると、これから前向きに、自らを見直し、変えていくことで、未だ日本企業は甦ることができると前向きな気持ちになれるではないか。その意味では、論文ではあるが元気が出る“熱い”本だった。

これに関連して、小川紘一「国際標準化と事業戦略」も読んでいるところ、後で投稿するかもしれない。

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