「メイド・イン・ジャパンは終わるのか」(2)
今日も暑い。都心に出た。
「メイド・イン・ジャパンは終わるのか」を続けて読んだ。80年代に日本の経済を牽引し、圧倒的な強さを誇った半導体産業。
現在の半導体産業を特徴付ける第一の要因は、半導体の集積度が急速に増大したことに起因する複雑性の増大である。それが半導体製造プロセスに高次の統合と柔軟性を要求したが、現場レベルに蓄積されてきたプロセス統合能力が対応しきれず、日本の半導体産業の競争力は低下していった。
増大する複雑性は、製造プロセス内の相互依存性の強さと範囲を拡大した。新たな相互依存性に対処するためには、先進的な情報技術(MES)の利用にともなって、製造プロセス全体の構造(アーキテクチャ)を見直すことが必要となった。また、プロセスの可視性を高めて、より広い範囲にわたる人々の協同活動を促進することを求められた。そこで鍵となったのは、抽象レベルをあげて生産プロセス全体を俯瞰し、新たな統合方法を基盤にプロセスを再構成することであった。それはまた、統合ノウハウの所在(人からシステム)、統合知識の形態(暗黙知から形式知へ)、統合範囲(個別プロセスからプロセスモジュール、プロセス全体へ)における根本的な変化を意味していた。こうした動きにおいて日本企業は米国企業に大きく遅れてしまった。
半導体の集積度があがり、コストが低下するとともに、半導体を利用する製品が拡大し、出口である市場の多様性が高まった。その結果、DRAMのような汎用製品であっても、複数の出口を想定したプロセス開発が必要とされた。特定の用途に向けて最適化するのではなく、拡大する多様な市場での利用を想定した開発が必要となった。
そこで、共通機能を抽出して、それを異なる製品間で共有化することが必要となる。90年代後半以降、米国をはじめ海外の半導体メーカーは、これに対応したワンランク上の統合的な知識・ノウハウの蓄積に邁進している。他方、日本のメーカーは、このような状況に十分対応できていない。
たしかに、巷間言われるとおり、日本の半導体メーカーは90年代以降激化した設備投資競争に迅速に対応できなかった。しかし、内部では、このようなところで遅れを取り始めていたといえる。では、どうするのかは、次回。
« 「メイド・イン・ジャパンは終わるのか」(1) | トップページ | Rainbow「On Stage」 »
「ビジネス関係読書メモ」カテゴリの記事
- 琴坂将広「経営戦略原論」の感想(2019.06.28)
- 水口剛「ESG投資 新しい資本主義のかたち」(2018.05.25)
- 宮川壽夫「企業価値の神秘」(2018.05.13)
- 野口悠紀雄「1940年体制 さらば戦時経済」(10)(2015.09.16)
- 野口悠紀雄「1940年体制 さらば戦時経済」(9)(2015.09.16)
コメント