楠木建「ストーリーとしての競争戦略」(4)
第2章 競争戦略の基本戦略
ここまでが、準備篇で競争戦略というものの考え方が立脚している基本論理についての説明が行われます。ここでの論点は①競争戦略の対象範囲、②競争戦略の目的、③利益の源泉の三点です。
①競争戦略の対象範囲
戦略には競争戦略と全社戦略の二つのレベルがあり、ここでは前者の競争戦略を対象とします。
②競争戦略の目的
これは、競争の結果として何を持って成功した、つまり、競争に勝ったとするかの基準と重なります。それを目的に競争をするわけですから。これに関しては、色々な議論はありますが「長期にわたって持続可能な利益」を目指すべきゴールとします。これがここで議論する競争戦略の目的です。
③利益の源泉
戦略論の立場から、企業の利益はどこから生まれるかという利益の源泉について、代表的な二つを説明しています。その第一が業界の競争構造で、企業が属する業界自体が利益を出しやすい業界かそうでないかをマイケル・ポーターのファイブ・フォースのような基準を用いて説明しています。そして、第二が「戦略」です。企業が属している業界がすべて利益をあげやすは限りません。そこで厳し業界にぁても、いかに利益をあげていくかという戦略をたてて事業を進めていくことになるわけです。
では、ここで「戦略」とは何かという、議論に進んでいきます。競争戦略の第一の本質は「他社との違いをつくること」だと著者はいいます。みんなが同じだったら競争にはならないですね。
ここで、さらに著者は他社との違いを考えるときに、代表的な二つのタイプがあることを説明します。これは、ある企業が戦略として他社との違いを作ろうとする時に、どのような点で違っていくかという切り口のことで、これからストーリーとしての戦略を考えていくときにも、戦略のタイプ分けをする指標にもなります。その二つというのがSPとOCです。この違いは、企業の体質や経営者の志向性、企業が置かれている環境の違いなどを反映しているようです。
このうちSPとはポジショニングの違いで、実際に企業が「何をやり、何をやらないか」という位置取りによって他社との違いをつくるものです。例えば、オーダーメイドに特化するとか、格安品しか扱わないとか、あるいは今までどこも扱わなかった全く新たな製品を扱うといったことで他社との明確な違いを作り出すのです。
これに対して、OCは組織能力とも言い、他社との競争に勝つために独自のものを持とうとするもので、例えば、独自の生産システムを作って同じ製品でも価格や品質で他社に差をつけるということで違いを作り出すのです。
これらについて、著者はマブチ・モーターやサウス・ウェスト航空のような具体的事例に即して説明しています。ここはこの著作の魅力でもあるので、実際に読んで堪能して下さいとしか言う他ありません。この二つはあくまでも考え方なので、実際の経営では明確な線引きはできませんが、だいたいの企業はどちらかの要素に偏っていて、それが企業の特徴となっているようです。
では、このあと上で書いたことの突っ込んだ内容は、おいしい引用を参照して下さい。この章あたりから、実例が出てきて、だんだん面白くなってきます。でも、この一番おいしいところは、実際の本で堪能して下さい。
読むにつれて、どんどん惹きこまれてしまうので、たくさん引用したくなる衝動を抑え切れません。しかし、著者も強調するように全体の「流れ」が大切です。構成要素だけ見ていたのでは、真価は味わえません。引用で興味をもったなら、ぜひ全体を読むことをお勧めします。この章も、次回から3回に分けて引用を紹介します。
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