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2010年10月12日 (火)

ジャックス「ジャックスの世界」

Jacks かつて、ロックという音楽に前衛とかアバンギャルドという言葉が結びついていた時代がありました。それは、この音楽に関わる人たちの共同幻想にすぎなかったと言われれば、それまでですが。おそらく、私が、そういうことについて、もっとも強く思い起こすのは、これでしょう。このバンドが、そういう風潮とは距離をおいていた、ということも含めて。

日本語でロックをするということが、真剣に議論の対象となっていた当時、1960年代終わりから70年代の初め、様々な試行錯誤が敢行されました。しかし、これほどユニークなバンドは後にも先にも、なかったのではないか、と思います。

例えば「マリアンヌ」という曲では、呪文のようなボーカルが歌うというよりも詩の朗読に近い、バックでベース、ドラムがリズムを刻むということとは全く無関係に、フリーに思い思いにソロを即興で演っています。それが、まったく合っているという思えない。リードギターは、ちょこ、ちょこ、と斬り込むようにソロ・フレーズを入れている、そのフレーズがまことにユニーク。じゃあ、リズムがとれないのか、というとボーカルがリズム・ギターをやっていて、それが唯一のリズム。というよりも、生ギターの弾き語りに3人のバックが伴奏ということを全く考えず後ろでプレイしているという感じ。アナーキーというのか、それが実は歌われている詩の世界と通底しているようにも思われてくる。ボーカルを含め4人がハイテンションで暴れまくる。

また、代表曲である「からっぽの世界」でもメロディがあるのか、ないのかわからないようなボーカルで、エコー効かせすぎで何を弾いているのかよく分らないようなリードギターに、ドビュッシーの「牧神の午後の前奏曲」の冒頭のようなフラフラした感じのフルートが終始絡みつく、「マリアンヌ」が動なら「からっぽの世界」は静なのだけれど、摩訶不思議で、詩の世界も、取りようによっては自分の内面の深層に深く潜るようなところもある。

また、一聴では、ふつうのラブ・ソングの「時計をとめて」は実は近親相姦を歌っていたりする。

バンドは、この後1枚のアルバムを出して解散してしまうが、ボーカルである早川義夫は、その後ソロアルバム「かっこわるいことは、なんてかっこいいのだろう」を出している。ピアノ弾き語りのシンプルな曲ばかりだけれど、尋常でない。

たぶん、この人たちの音楽は10人が聴いて、うち9人は何やっているか分からないと拒絶してしまうけれど、1人は病み付きになってしまうような性格のものだと思います。私は、数十年間、離れられません。

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