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2010年10月 9日 (土)

藤本隆宏「能力構築競争」(1)

Nouryoku 最近、日本のものづくり、とくにアーキテクチャ関連の本を読むことが多かったのですが、本書は少し前になりますが、所謂インテグラル型のアーキテクチャの代表的なものづくりである自動車産業において、とくにトヨタ・システムを中心に、その強さを分析したもので、新書とはいえ約400ページにも及ぶ分厚く読み応えがあるものです。通勤の車中で読むには、コンパクトではありますが、かえって単行本より重いので腕が疲れました。以前に読んだ「技術力で勝てる日本が、なぜ事業で負けるのか」「国際標準化と事業戦略」あるいは「メイド・インメジャパンは終わるのか」などととも関連している内容です。

膨大な著作のページのうちの多くのページが概念の説明とデータとその検証に費やされている観があるので、研究者や学生さんには親切なのかもしれませんが、何冊かの関連本を読んでいる実務者にとっては、ややうっとうしく感じました。ただし、こういうところを丁寧に読んでいくと、とても勉強になるとは思います。そこで、かいつまんで、私なりの読みを以下に書きましょう。

筆者はメーカーの競争力には「表層競争力」と「深層の競争力」があると言います。表層の競争力とは、特定の製品に関して顧客が直接観察・評価できる指標のことで、具体的には価格、知覚された製品内容、納期などのことを指します。これに対して顧客は直接観察できないけれど、表層の競争力を背後で支え、かつ企業の組織能力と直接的に結びついている指標のことを深層の競争力といい、生産性、生産リードタイム、開発工数、適合品質、設計品質などを指します。表層の競争力が直接顧客の支持率を競うことで利益をあげていくわけですが、本題の能力構築競争は深層の競争力の競争を指すことになります。

実際のところ、日本の自動車産業はものづくりの組織能力や深層の競争力では安定的に強かったが、表層の競争力は円高やブランド不足の影響などもあり欧米の後塵を拝し、利益パフォーマンスは決して強いとは言えなかったのです。一方、ものづくりに関しては自動車という製品が擦り合わせて作り込む製品であることが日本のメーカーの組織能力の傾向と相性が良かったと言います。このような擦り合わせてつくるために製品設計情報を一本の糸として全体としての一貫性が貫かれ、工程側における情報の受信、作業側における情報の発信がともに間断なく行われ、これに伴うフィードバック情報も頻繁に流れ、その結果開発システムからは統合性の高い製品設計情報が生み出されという線のもとに、情報が縦横に間断なく流れていると言います。有名な、ジャストインシステムや生産工程の個々の施策(多工程持ち、多能工化など)がこの流れの中に配置されているわけです。

そして、これが1980年代以降に顕在化した日本の自動車産業の強い国際競争力に対して、欧米企業が対日キャッチアップを開始しても苦労の末でも深層レベルでは日本企業に追いついていないことを考えると、このような一見地味な深層の競争力が実は容易に模倣できない複雑な体系であり、これを構築するには生産や開発の現場での地道な活動の賜物であったものと言えます。

では、このような日本企業の深層の競争力はどのようにして形成されたのか、これが私には、本書の核心になると思いますが、次回に。

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