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2010年10月 1日 (金)

楠木建「ストーリーとしての競争戦略」(12)

第4章 始まりはコンセプト

話は、いよいよ核心に迫ってきました。著者はこの次の第5章のキラーパスが面白いと思って最後にとっておいているようですが、私には、実務的には、このコンセプトの考え方は、すぐに自らを問い直して、いまの状況を再確認させるという意味あいも含めて、ストーリーの一番の核ではないかと思いました。後で出てきますが、キラーパスもコンセプトなしには生まれない、というとこからみると、一番大事なのは、むしろ、こちらではないか。この章でもブックオフやリクルートの雑誌「ホットペッパー」、アスクル(ここでの久美子さんの話は涙なしにはいられない?)、アマゾン、そしてサウスウェスト航空(コンセプトにより想定するライバルも違ってくるというは、目から鱗バラバラ)といった豊富で、魅きつけられるような事例に沿った説明が展開されていますが、興味ある方は実際に購入して読むことをお勧めします。

前章で、終わりから逆回しに考えると言うことで、結果である長期的な利益の持続という目標のために、競争優位のあり方を考えました。ここでは、起点を考えます。コンセプトが本質的な価値を備えていなければ、スタートできないわけです。では、コンセプトとは何かといえば「本当のところ、誰に何を売っているのか」ということです。例えば、自動車メーカーは「自動車」を「消費者」に向けて売っています。しかし、自動車を買う人は何を求めて、何に価値を見出して、高価なものを購入しているのか。交通の手段としての必要性もあります(主に市街地で使うか、山間部で使うか、セカンドカーとして必要かといった、場合分けも可能です)。楽しみとして買うひともいれば、見せびらかすアイテムとして買うひともいます。それ以外にも、色々な動機で買われるでしょうし、これまでにない潜在的な動機を発掘することも可能です。この場合、それぞれの動機で自動車に求められることは違うはずです。このようなときに、コンセプトは顧客に提供できる価値の本質を一言で凝縮的に表そうというものです。どのような顧客が、なぜどういうふうに喜ぶのか、要するに企業が何のために事業をしているのか、こういったイメージが鮮明に浮かび上がってくるものです。

このコンセプトの構想にとって大切なこととして著者は次の三つを上げています。

その第一が、「誰に」と「何を」を表裏一体で考えることによって「なぜ」に至ることが大切だと著者は説きます。これによりダイナミズムが生まれるからです。

そして第二に、「誰にきらわれるか」をはっきりさせること、つまりはターゲットを明確にすることです。ターゲット顧客から徹頭徹尾喜ばれるということは、ターゲットから外れる顧客からはっきり嫌われるということです。

第三に、これが最も大切なことですが、「人間の本性」を捉えることだといいます。人間の本性とは、要するに人は何を喜び、楽しみ、面白がり、嫌がり、悲しみ、怒るのか、何を欲し、何を避け、何を必要とし、何を必要としないのか、ということです。

この三つを押えて、その製品やサービスを本当に必要とするのは誰か、どのように利用し、なぜ喜び、なぜ満足を感じるのか、こうした顧客価値の細部についてのリアリティを突き詰めることでしか、コンセプトしつくれないのです。とくにたいせつなのは「なぜ」についてのリアリティです。これは、自分自身の生活や仕事の中にあるはずです。こうした自分を見つめることから始まるものだ、と著者は説きます。決して、マーケット調査やコンサルティングなどからは得られるものではないとも。

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