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2010年11月21日 (日)

ウォーレン・バフェットの「株主への手紙」2009(1)

バークシャー・ハザウェイの株主の皆さんへ

2008年における純資産の増加額は218億ドルとなり、それにより、我々のAクラスとBクラ両方の株式について1株当たりの簿価は19.8%増加しました。この40年の間(つまり、我々が経営を引き継いだ以降)、1株当たりの簿価は19ドルから84,487ドルまで成長しました。これは年率で20.3%の成長に当たります。

バークシャーが最近行ったバーリントン・ノーザン・サンタ・フェ(BNSF)の買収により、少なくても65,000人の新たな株主が、我々の株主名簿で既存の約50万人の株主の上に加わりました。私の長年のパートナーであるチャーリー・マンガーと私にとって、我々のすべての株主がバークシャーの方針、目標、限界、そして企業文化について理解してくれていることが、とても重要です。そこで、我々は、毎年のアニュアルレポートで我々を導いている経済原則を繰り返し述べています。これらの原則は、今年のアニュアルレポートでは89~94ページで述べられています。そして、私はあなたがたすべてに、とりわけ新たに株主となった方に、これらを読んでいただきたいと思っています。バークシャーは、何十年もの間、この原則を固く守りつづけてきました。そして、私がここを去ってからも、ずっと守られていくでしょうから。

この手紙の中で、我々のビジネスの基礎についても説明していきますが、それがBNSFからの新規株主の方々にとっては新入生のオリエンテーション授業に、またバークシャーのベテラン株主の方々にとっては再教育講習となってくれることを願っています。

我々はどのように自己を評価しているか

我々の経営陣のパフォーマンスを評価するための我々の測定基準を、この手紙の表紙に表示しています。(バークシャーの経営を引き継いだ)当初から、チャーリーと私は、私たちが何を達成したか、あるいは達成しなかったかを測定するための合理的で不変の基準があると信じてきました。そのことによって、我々は、パフォーマンスの矢が刺さったのを見て、その刺さった地点を標的のように同心円を描きたいという誘惑から、免れることができたのです。

我々の株主の皆さんがインデックスファンドを保有することによって、コストをかけずに、得られるパフォーマンスに当たるかを測ることができるため、スタンダード&プアーズ500を、我々のボギー(ゴルフの1点減点?)として選択することは、(基準としては)やり易いと思います。株主の皆さんが、それと同じ結果を得るために、余計なお金を払ってくれるでしょうか?

我々にとって難しいのはS&Pに対してバークシャーが勝っているのを、どのように測定するかということでした。単に我々の株価の変動を以ってすればいいという意見もあります。事実、非常に長い期間を以って見た場合に、それがベストの方法でしょう。しかし、1年1年の市場株価は非常に不安定であります。10年間という長い期間の伸展を見るとしても、その測定期間の最初か最後に馬鹿馬鹿しいほどの高値か安値があれば、その評価を大きく歪めてしまいます。マイクロソフトのスティーブ・バルマやGEのジェフ・イメルトが、経営者のバトンを手渡された時に、自社の株価が鼻血が出るほどの価格で取引されたことに苦しんだ経験を、皆さんに話すことができるでしょう。

我々の年度ごとの伸展を測る理想的な基準は、バークシャー1株当たりの実態価値の変化でしょう。ああ、その価値は精度の高い数値で算出することはできません。それで、我々は粗雑な近似値として1株当たりの簿価を使用しています。このような基準に頼ることについては、さきのアニュアルレポートの92と93ページで説明しているような短所があります。さらに加えて、たいていの会社の簿価は実態価値を控えめに計算しています。そして、確かにバークシャーにも、それは当てはまることなのです。集計してみると、われわれの各ビジネス(企業)は帳簿価格よりかなり高い価値を有しています。さらに、我々の極めて重要な事業である保険業については、その差は巨額になります。たとえそうだとしても、チャーリーと私は、我々の簿価が、控えめではあっても、実態価値の変化を追いかけるのに最も有効であると信じています。この測定指標によると、この手紙の最初のパラグラフの通り、我々の簿価は1965年のスタート以来、年20.3%複利で成長してきました。

われわれが、この指標の代わりに株価を指標にしていれば、1965年のスタート以来、年22パーセント複利で成長してきたことに也、年バークシャーの評価はもっと高いものになります。驚いたことに、45年の期間の通算では、年間複利の僅かな差が、簿価の増加が434,057%であるのと比べて、株価の上昇801,516%となっています。我々の株価の上昇は、1965年にはバークシャーの株価は収益性の低い織物産業の資産により簿価を下回っていましたが、今日では一流のビジネスにより、常に簿価を上回る株価で市場で取引されるようになったためです。

要約すると、2ページのテーブルは3つのメッセージを伝えています。3つのうち2つはポジティブで、1つはきわめてネガティブです。第1には、1965~1969年から始まって、2005~2009年で終わる5年間ごとの区切りは、41通りありますが、どの期間を取ってみても我々の簿価の増加率はS&Pの上昇率を下回ったことはありませんでした。第2に、市場が好景気だった数年間、我々はS&Pの上昇率に遅れをとったものの、市場が下落した11年間は常にS&Pより良い結果を残しました。言い換えれば、我々は攻撃よりも防御に秀でており、この傾向はおそらくこれからも続くでしょう。

大きなマイナスは、われわれの規模が大きくなるに従って、我々のパフォーマンスの優位性は劇的に減ってきており、さらに、この不愉快な傾向はこれからも確実に続いていくということです。確かに、バークシャーには多くの傑出したビジネスやかれらの才能を最大限に引き出す特異な企業文化の中で働いている真に偉大な経営者たちが存在しています。チャーリーと私は、これらのビジネスや経営者たちが時の経過につれて平均以上の結果を出しつづけてくれるものと信じています。しかし、莫大な資産額は自らの足枷のような錨となり、そして、(このことから生じる)我々の将来の優位性は、あったとしても、われわれの歴史的な優位性のわずかにすぎません。

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