河合忠彦「ホンダの戦略経営」(4)
それでは、このような新製品開発の特徴を戦略経営との関連から明らかにしていくことになります。戦略経営とは、最初に言ったように“戦略的新製品開発も確かに重要だが、企業の存続・成長のためには、新製品開発以外のマーケティングや人的資源管理、ファイナンス等の職能戦略について戦略的である必要があり、しかも、それらはバラバラにではなく、統合的に展開されなくてはならない。このように「環境変化に合わせて(また時に先取りして)適切な“経営戦略”を構築し、その現実に向けて、新製品開発、マーケティング、人的資源管理、ファイナンス等の職能戦略を体系的に展開すること」を本書では「戦略経営」と呼ぶ”ということになります。この定義で注意することは、戦略経営は、いわゆる「経営戦略」とは違い、戦略という案を意味するのではなくて、それに基づいて企業を戦略的に経営すること、すなわち行動することを意味します。次に注意すべきは、戦略経営は経営戦略をマネジメントすることではなくて、企業を戦略的なマネジメントすることだと言うことです。そして、ここで言う戦略的にとは企業戦略の実現に向けて体系的にということを意味します。
実際には、このようなことは言うは易く行うは難しというものです。しかし、企業を取り巻く環境の不確実性が高まれば高まるほど、その重要性が増してくるものだということです。ここで見ている自動車業界では、先進国市場の成熟化と新興国市場の拡大、環境規制の強化等の環境変化は産業構造や競争構造を大きく変化させる可能性を秘めていると言えます。これらへの戦略経営による適切な対応の有無が各社の今後を大きく左右させることになると思われます。では、このような戦略経営についてトヨタと対比しながらホンダを見ていきたいと思います。
« 松宮秀治「芸術崇拝の思想」(7) | トップページ | 河合忠彦「ホンダの戦略経営」(5) »
「ビジネス関係読書メモ」カテゴリの記事
- 琴坂将広「経営戦略原論」の感想(2019.06.28)
- 水口剛「ESG投資 新しい資本主義のかたち」(2018.05.25)
- 宮川壽夫「企業価値の神秘」(2018.05.13)
- 野口悠紀雄「1940年体制 さらば戦時経済」(10)(2015.09.16)
- 野口悠紀雄「1940年体制 さらば戦時経済」(9)(2015.09.16)
コメント