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2010年11月 1日 (月)

河合忠彦「ホンダの戦略経営」(3)

ホンダの分析は以上のとおりですが、対比すべくトヨタの分析をしています。

トヨタの開発プロセスの特徴をホンダの違いに着目しながらあげて見ると、次のようなことが言えます。

1)              開発のスタート時についてみると、ホンダの開発リーダーは簡単な指示を与えられただけで、本社サイドの指示用分析の結果には拘束されずに自分の主観を重視してコンセプトの形成に向かうのに対し、トヨタの場合には、開発チームが客観的な市場分析を行い、その結果を踏まえて論理的にコンセプトの形成に向かう。(したがって、この点に焦点を当てれば、ホンダよりもトヨタのほうが戦略的とも言えます)

2)              その結果、実際のコンセプト形成プロセスでは、ホンダ車の場合には新価値の実現のためにターゲットとするユーザー層と彼らの欲するであろうニーズをひとつの理想型として明確化し、それを満たす製品機能の集合のすべてを実現しようとする「理念型的方法」が用いられたのに対して、トヨタの場合には、特定の製品機能に関連して新価値を実現しようとするのではなく、多くの機能をバランスよく実現しようとする「バランス方式」が取られている。

3)              その結果、コンセプトに込められた製品の新価値創造性は、ホンダ車がより高いものだったのに対し、トヨタの場合には既存カテゴリー内での完成度向上型だった。後述するトヨタのベンチマーク方式やバランス方式ではもともと新価値の追加は考えにくい。

4)              以上の結果、ホンダ車とは違いトヨタの場合にはコンセプトに伴う価値コンフリクトが生じにくいので、ホンダの場合の説得のような克服方法が用いられることが極めて少なくなります。トヨタのバランス方式は、特定の価値にこだわりにくいため、コンセプトは抽象的で反対しにくいもので足りるし、またベンチマーク方式(充足すべき価値についてすべてのライバル車を順位付け、そのいずれにおいてもトップレベルに入るという形で決める方式)では、どの価値を重視すべきはその価値が競合車で重視されているかによって外圧的に決まってしまい、開発者や関係者が主体的に変更する余地が残されていないからとも言えます。

トヨタの開発リーダーは長年にわたり「80点+α」主義に依拠すべきと求められてきたことに起因すると考えられます。すべての機能を高いレベルでバランスさせるという、それがトヨタの冒険できない体質の形成に繋がったことは否定できない。このようなことからトヨタの開発プロセスはホンダの新価値創造型に対して問題解決型とタイプ分けすることができます。このようなことからトヨタの開発リーダーはも顧客価値の最大公約数の実現を求め、バランスを考えつつ、客観的にコンセプトを形成するため、コンフリクトは少なく、その結果実現する車は、新価値創造性は必ずしも高くないが、販売の点では、平均的には高いパフォーマンスをあげることが可能である。

このような比較は、必ずしもトヨタが新価値創造型の開発を全く行わないと言うことではない。逆にホンダの場合も新価値創造型の開発はRV系の車で、それ以外の車は制約条件が多いため結果的に問題解決型に近いものになってしまうケースも多い。しかし、それでもなお、新価値創造型と問題解決型の方式は相互にかなり異質であり、ひとつの企業が双方を同時に実現するのは難しく、可能なのは、一方を基調としつつ、他方をある程度とり込むというスタンスではないかということです。また、それそれの方式自体で優越を云々することは無意味であり、経営戦略との適合性で評価されるべきだということです。単純化すれば、市場ニーズが成熟化した先進国市場向けには新価値創造型が、また発展途上の市場向けには問題解決型が向いているのではないか。また、戦略的に狙いが明確な車については問題解決型が向いているのでないかということです。

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