あるIR担当者の雑感(7)~決算短信?
こんなことを書くと、愚痴だなと、自分でも思うことがあり、これを読んでいる方には申し訳ないと思ったりしますが。また、会社によっては、そんなことは絶対にない、ということもあるでしょうから。ただ、私の勤務先以外の会社でも似たようなことがあるとは、風の噂で耳に入ってくるので、敢えて少し書いてみます。ちょうど、今、3月決算の会社の第2四半期の決算発表で出揃ってきたところです。日本の上場会社の場合には証券市場に向けて決算短信をものを発表します。同時に新聞社や通信社等の報道機関にも同じものをプレスリリースします。東京ならば、東京証券取引所やジャスダック(今は大阪証券取引所です)に公開し、東京証券取引所の3階にある兜クラブという記者クラブの専用ポストに決算短信を配ります。(これを、通称、「投げ込み」といいます)
さて、この決算短信ですが、売上や利益、資産や負債の決算数字を発表する、損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書といった財務諸表、以外に定性的情報といって事業の経過とか財政状況について文章で説明するところもあります。財務諸表は経理が当然作成するということになりますが、定性的情報については、会社によって経理がつくったり、IR部門が作ったり、法務や総務が作ったりと、会社によってまちまちのようです。
この定性的情報って、ほとんど大部分が読んで面白くないです。小説のように手に汗握るまでは期待しませんが、少なくとも企業が事業の結果を市場にアピールできる場でもあるというのに、読んでみて興味を掻き立てるということすら皆無なのです。なんか、お座なりというのか、記載することが決まっているので、とにかく何か書いたというとしか考えられないものばかりなのです。(中には、文章にすらなっていないひどいものもあります。)これは新しい、古いとかいうようなこととも余り関係がないようです。社長がたいへん意欲的な経営をして成長している会社でも、伝統がある手堅い会社でも、あまり変わりはないようです。また、不思議なことにIRに熱心で立派なアニュアルレポートやホームページを充実させているような会社でも、決算短信の文章はお座なりのところがあります。それが見えると、この会社は派手でよく見えるところは飾るけれど、地味な(?)ところは手を抜くのではないか。結局、表面的なのかと勘ぐりたくなってしまうこともあります。
でも、違った面から考えてみると、そうまでして大多数の企業が、やっつけ仕事で仕方なく付き合っているような、決算短信の文章って、そうまでして載せる必要があるのでしょうか。凄く無駄な気がしてなりません。それとも、株式市場で、これは投資家のために絶対に必要だというような強固なポリシーでもあるのでしょうか。
また、今年度から決算短信の書式が変更となり、簡易化されました。決算が四半期ごととなり、以前は半期で作成していた短信が倍の四半期となったこたから経理関係者の負担はかなりのものだったはずで、簡易化されることは各上場企業の負担が軽減されることになり、反対すべきことはないわけです。しかし、簡易化の内容が、果たして投資家のことを考えているのか、それを受け入れる企業の側が単に簡易化されることだけを歓迎してはいないか。と余計な茶々を入れたくなるのです。例えば、短信は連結財務諸表中心で、企業単体のものは発表されなくなりました。連結というグループの中で本体がどうなのかは表に出てこなくなる、とくに製造原価報告書のようなものはメーカーの分析をする際に、どれだけコストダウンを進めたのかが端的に数字に表れるのが、これです。また、セグメントに対する考え方がマネジメントアプローチに変わって、去年まで、事業の種類と所在地別でそれぞれ売上と利益を発表していたのが、所在地別は今年から発表しなくなりました。これなど、企業の海外進出がどの程度なのか知るための指標として便利なものだったのですが。私の勤め先もそうで、あまりたいしたことは言えないのですが、ここで、投資家のためにと敢えて、発表しなくてもいいけれど発表するという企業はないようです。負担が減るということでほっとしていた経理を説得するのはたいへんでしょうけれど。
今回は、愚痴っぽくなってしまいました。
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