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2010年11月15日 (月)

ウォーレン・バフェットの「株主への手紙2008」(1)

アメリカの上場会社はアニュアル・レポートを毎年作成し、その中にCEOが自らペンを執る「株主への手紙」があります。経営者が自ら、企業の所有者である株主に向けて、業績や思いを語りかけるもので、日本の有価証券報告書には、こういうものはありません。しかし、株主総会で株主に向けて報告する事業報告、有価証券報告書、決算短信の文章については、私としては企業から投資家や株主に対するメッセージの場と思いたい。そこで、以前にも書きましたように、バークシャー・ハザウェイのCEOであるウォーレン・バフェットの「株主への手紙」を参考、というよりもリスペクト?していて、下手な翻訳してみています。しばらくの間、最近の、ここ2年のものをご覧いただきたいと思います。まずは、一昨年のものから。

2008年の時価総額は115億ドル減少しました。そして、それはAクラスとBクラスのすべての株式について1株当たり9.6%の減少に当たります。この44年の間(つまり、我々が経営を引き継いだ以降)、株価は19ドルから70,530ドルに増やしてきました。これは毎年20.3%の成長率で増えてきたことになります。

前のページの表は、この44年間のバークシャーの株価とS&P500のインデックスのパフォーマンスの推移を示しています。そして、2008年はバークシャーだけでなくS&P500のインデックスにとっても最悪の年であったことを表わしています。今期は、社債、地方債、不動産、商品取引などなど壊滅的な結果に終わりました。年末には、あらゆる種類の投資家は血だるまで惑乱したのは、あたかもバドミントンのゲームに小鳥が迷い込んでしまったような状態でした。

この1年は日が経つにつれて、世界中の巨大な金融機関が致命的な問題を抱えていたことが明らかになりました。クレジット市場が重要な点において役に立たなくなる機能不全に陥りました。私が若かった頃にレストランに壁に貼られていた“神の御名において我々は誓う、すべての支払は現金でする”が国中の合言葉となりました。

第4四半期では、住宅市場や株式市場の下落による金融危機は、国全体を巻き込み、身がすくむような恐怖を生み出しました。景気の落ち込みは、これまで私も見たこともない程のスピード加速しました。アメリカをはじめとした全世界は悪循環に陥りました。不安により事業者は縮こまり、これがさらに大きな不安を招きました。

このような景気の悪循環に対して政府に大規模な施策を決定しました。財務省とFRBは、ポーカーでいう、“オール・イン”を行いました。景気に対する処方箋は、以前のカップ一杯分だったものが最近では樽一杯分まで増量されました。このようなかつてなら考えられないほどの投薬量は、あとで後遺症をもたらすことは確実です。1つ考えられるものは猛烈なインフレーションですが、それが確かなのか、どのような内容のものなのかは、誰にも予想がつきません。さらに、主要産業が連邦政府の援助に依存するようになりました。そして、市や州政府に対しても度肝を抜くような要求をしています。彼らに対して公的援助からの“乳離れ”をさせるのは政治的な挑戦でもあります。しかし、彼らはいっこうに“乳離れ”をしようとしません。

この景気の下降がどのようになろうとも、昨年の政府による即時の強力な施策は金融機関の全体的な崩壊を避けるため不可欠な措置でした。このことは、我々の経済のあらゆる領域に大きな地殻変動を起こしました。好むと好まざるとにかかわらず、ウォールストリート、メインストリートそしてアメリカの様々なストリートの住民は同じボートに乗っていました。

我々は悪いニュースに取り巻かれていますが、この国は過去に、これよりはるかに苦しい事態に正面から向き合ったことを決して忘れないで下さい。この20世紀だけでも、我々は、2つの世界大戦、1ダースかそこらのパニックと不況、1980年にプライムレートが21.5%までになった悪性のインフレ、失業率が長年にわたり15%から25%の間で変動した1930年代の大恐慌に対してきました。この間、アメリカは飽くことなく挑戦をくりかえしました。

しかし、必ず、我々はこれらを克服してきました。それらの障害やその他の多くの障害に直面して、アメリカ人の生活水準は1900年代を通じて約7倍に上がり、ダウジョーンズ株価指数は66から11497に上昇しました。過去の十数世紀の人間が得た自らが生き残る事に関することで得たものが、あったとしても、いかに少なかったか、今世紀の記録と比べれば一目瞭然です。道はスムーズでなかったけれど、我々の経済システムは長年の間、よく機能してきました。これは、他のどのようなシステムに比べても人間の潜在能力を生かすもので、これからも生かしつづけるものです。アメリカの最良の日が目の前に待ち受けているのです。

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