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2010年11月 8日 (月)

河合忠彦「ホンダの戦略経営」(6)

ホンダの場合はどうでしょうか。RV路線への転換の成功、北米市場の成功などにより拡大路線を推進し、国内販売台数100万台構想が打ち上げられましたが、利益率は4%と低迷しました。2003年に社長に就任した福井氏は、100万台構想を撤回し、代わりに顧客満足度最大化と源流回帰として現場重視のスタンスを強く打ち出しました。具体的には、「ホンダを買ってもらったら、次もホンダを買ってもらう」という代替率を上げる、そのためには中古車価格が高くなくてはならない、そのためには品質を高く維持することと需要に見合った適正な生産水準を維持するという、台数主義を否定することになります。源流回帰としては、研究開発体制の整理統合と決裁権限の大幅な委譲を進め、開発スピードの向上を図りました。また、生産システムについては、以前00年からの「生産体質改革」で、溶接、塗装、組立等の設備の汎用化を狙い1つの生産ラインで8車種の混流生産が可能となっていたのを、エンジン生産にまで拡大し、開発との関係も見直した。また、販売チャンネルを一本化していた。

この体制が金融バブル崩壊のより需要急減のときに、迅速な対応を可能としました。設備投資や新規開発の迅速な凍結が固定コストの削減が損益分岐点の低下をもたらし、もともと中国他の新興国比率が高かったこと、北米では中古車価格の低下が抑えられリース販売用の引き当てが減ったこと、現地生産率が高いため円高の影響が低かったことなどの外的な要因もあり、影響は比較的軽度で乗り切っています。このような乗り切りを可能にした最大の要因は、これに先立つ時期の経営がバブルに踊らされることなく、極めて堅実だったことだ言います。その象徴的な例が、フレキシブル生産システムを基礎とする工場間での生産車種の移管による稼働率の平準化です。また、投資に対する堅実性ないし慎重性が、迅速な設備投資の凍結を可能にしたわけです。また販売戦略上の堅実の点では、短期的な販売奨励策、例えばフリートと呼ばれるリース会社への一括販売や販売金融の拡大にも慎重だったと言います。

それでは、ホンダの戦略経営の特徴をトヨタとの対比で見ていきましょう。まず、トヨタがフルライン戦略をとったのに対してホンダが取ったのはカテゴリーを限定する絞込み戦略でした。個々の車ではトヨタとの差別化を図るための新価値創造でした。これを具体化する個別の戦略は新価値創造の開発戦略であり、生産戦略では、トヨタの大量生産によるコストダウンは車種ごとの専用ラインが基本だったのに対して、混流生産や工場間での生産車種移管を可能とするフレキシブル生産が基本だったことです。また、販売戦略のウェイトは極めて堅実だったことです。これらの戦略の相乗効果を生んだことも特筆すべきことだと言います。

そして、ホンダの戦略経営の全体的特徴は次の4点にまとめられます。

1.              何よりも新価値創造性、先進性を尊重すること

2.              行動における柔軟性が高いこと

3.              慎重な側面も持つこと

4.              新価値創造性を重視するために、規模やシェアの拡大への志向は強くないこと

このようなホンダモデルは不確実性の高い環境においてより有効なものだ言います。

しかし、このようなホンダモデルの問題点は長所の裏返しも言えるもので、戦略性が必ずしも十分でないことと言えます。その1つのあらわれは、必ずしも予測は難しくないが、早い段階からの全社的かつ体系的な取り組みを必要とする問題への対応は得意とはいえない点です。さらに、他社に先行してリスクを取って特定の戦略を選択し、積極的に実行し、環境を自己に有利なものに変えてしまう戦略的行動は得意でない点です。

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