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2010年12月 9日 (木)

ゼルダ「ダンシング・ディズ」

Zelda Zeldaというバンド名から、「グレート・ギャツビー」のスコット・フィッツジェラルドの妻で、ロスト・ジェネレーションと呼ばれる第一次世界大戦後の空虚さに生き晩年は狂気に沈んだ女性にちなんでの、いかにも女子大生(現代では死語となりそうなニュアンスですが)らしさというのを感じます。1980~90年代というから女の子バンドのはしりとでも言うのでしょうか。音的には、当時のニューウェブと言われた風潮とニューヨークのアーティスティックなインディペデントなバンドやグラム・ロック、具体的には、初期のロキシー・ミュージック、デビッド・ボウィ、ブライアン・イーノ、ルー・リード、ニューヨーク・ドールス、パティ・スミス、トーキング・ヘッス等のもろもろの影響を受けたのが分かる音楽を演ってたように思います。同時代の人には、これらの名があがるのを見ると、スノッブで耽美に染まり易く、ある程度の屈折を見せて、しかし、実態はニュー・ミュージック・マガジンのようなお堅いロック雑誌なんかを購読したりして真面目にロックをお勉強した、というのだったのではないかと思います。

で、今日は、このバンドのダンシングデイズというアルバムです。これは当時の最先端であるビデオと同時に発売されたものでした。当時は、最先端で、とても新鮮だった映像をまじえて演奏を聴いてみると、上でお話したようなこのバンドの性格が良く出ていたように思えました。

オープニングの後、演奏されるクエスチョン・ワンと言う曲は、ノリノリのロックンロールナンバーで、客席はノリノリになるのですが、実際に演奏する彼女たちはというとクールで、映像を見ると良く分かります。このあたりにも彼女たちの知的にロックを捉えようとする特徴が良く出ているというのか(いい意味でも、悪い意味でも)、といえると思います。例えば、この曲の歌詞は、ニューヨーク・アンダーグラウンドのバンドやギンズバーグなんかの影響がよく感じられるものですが、ボーカルの高橋佐代子は独特のハスキーで、少し呪術的な雰囲気を醸し出す声で、熱狂的に叫ぶというのではなく、歌詞が聞きとれるようにひとつひとつの言葉をはっきりと発声し、しかも歌詞のフレーズの歌い方も、歌うと言うよりは朗唱するように雰囲気で、陰影を与えながらうたっています。サポートメンバーのパーカッションは熱くなっていますが、ドラムは正確にリズムを刻み、ベースラインは複雑です。そして、ギターの石原富紀江がフロントプレイヤーという派手さがなくて、ボーカルに寄り添うようで、しかし、独立性をもった、つかず離れずでプレイしています。曲調は違いますが、ボブ・デュランの「追憶のハイウェイ61」の最後の長大な曲“Desolation Row”でデュランのボーカルと拮抗するギターのようです。しかし、こっちのゼルダの方はノリノリのロックンロールナンバーです。このギターの聴き所はボーカルのバックでソロフレーズを密やかに始めて、だんだんに前に出てくるところ。そして、この人のギターソロは、短いリフをつなげて大きなフレーズを創り出す。クラシック音楽の演奏家ならば、長く深いフレージングと言われるのと同じもの。リフをつなげて長く長くなる。そしてなが~くなったフレーズが波打つようにうねるのです。それは、ひとつひとつの小さな波が重なって波打つ大海原になるようです。以前に西脇千花の演奏するスカルラッティのソナタK27について書きましたが、彼女のピアノのフレージングは、ここでの石原のギターにも共通するものに思います。このようなスケールの大きなギターが派手に前に出ることなく、ボーカルとのバランスを取りながら、しかも数分のノリノリのロックンロールの中で演られるという、堀の深い音楽となっています。

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