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2010年12月 6日 (月)

大久保隆弘「エンジンのないクルマが変える社会 EVの経営戦略を探る」(4)

一方、電池に関しては90年代にニッケル水素電池、そしてリチウムイオン電池が実用化され、電池の発明から一世紀が経って、ようやく新しい原理が発見されたことになります。しかし、その90年から現在までに20年が過ぎ、その間改良による性能の向上やコストダウンはあったものの、基本的な原理は変わっていない。半導体などの進化のスピード比較すると遅々としているように見えます。電池の技術開発の特徴はセレンディップ(思いがけない幸運)なもので、これを見落とさず実現に結び付けるのは開発者の経験と熟練に裏づけられた勘が必要で、計画とおりに開発が進むと言うものではない性格のものです。

電池メーカーとしては長年鉛蓄電池とその周辺事業を続けてきたGSユアサがあり、三菱自動車、あるいはホンダとそれぞれにリチウムイオン電池の合弁を行っています。

もともと、リチウムイオン電池は日本で製品化された製品で、当初は日本企業が世界市場を独占していましたが、現在は中国や韓国にシェアを奪われつつあります。半導体や液晶で日本が韓国や中国に取って代わられたような構図は未だ生じていません。しかし、2010年代初めのPHV、EVの発売を目指して、世界の自動車メーカーと電池メーカーの提携はほぼ終わっています。だいたいのところ、日本の自動車メーカーと日本の電池メーカーの提携,、欧米の自動車メーカーと韓国、中国メーカーの提携という構図におさまります。このことは,日本の電池メーカーのグローバル化を妨げる危険や欧米主導による標準化の流れに遅れをとるリスクを孕んでいます。

さきに、電池の技術開発の特徴を述べましたが、リチウムイオン電池が今後このまま順調に進化していくかは、例えばDRAM半導体のようにイノベーションサイクルがあって、数年サイクルで一定期間を経た後に確実に次の段階の製品ができるかというと、必ずしも電池の歴史と同様で不透明です。現時点では、基本的な技術は公知のものとなり、アジア勢のキャッチアップが始まっています。これはリチウムイオン電池のイノベーションが成熟期に差し掛かっているか、あるいはライフサイクルの踊場にあって次の段階への移行時期が到来している、ということを意味しています。しかし、先は見えないという状況です。もし、イノベーションが滞ると次はコスト競争になってしまい、日本企業は市場からはじかれ淘汰される結果にもなりかねない。はじかれた企業には次のイノベーションを起こすチャンスは失われてしまいます。それがエンジンの競争と電池の違いです。最悪のシナリオは、イノベーションが停止したときに、すぐに追い越され、その都度日本企業は競争から脱落し、またイノベーションが生じて追い越せても、イノベーション停滞期に技術的優位さなくなり、コスト競争力で追い越される。その繰り返しの果てに日本企業は1~2社が存続するだけとなり、完全にイノベーションが停止したときに、市場からすべて排斥されることになってしまうというものです。

リチウムイオン電池の進化を陰で支えているのが材料メーカーであり、正極、負極、セパレータ、電解液の四つの要素で構成される二次電池は、各要素別に異なる材料メーカーが電池メーカーに供給しており、これらは日本企業が優勢を保っています。リチウムイオン電池は、材料自体の進歩や材料間の組み合せがイノベーションに大きく関わっており、この分野ですべての材料メーカーが備わっているのは日本企業の優位性と言えます。しかし、材料メーカーは日本のみならず世界のメーカーに材料を供給しており、材料では差異化できません。電池メーカーの差異化の可能な範囲は自社が特許を取得する以外は、素材の組み合せや配合、製品化、電池の量産化技術などにかぎられる。

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