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2010年12月13日 (月)

あるIR担当者の雑感(8)~説明会の終わった後で

しばらくの間、ウェーレン・バフェットの株主への手紙を拙いながら訳したのを載せてきました。これをしばらく前から、仕事上で行き来のある人に、折をみて、適宜見せたりしていますが、大半のひとはふ~んという感じで、反応が返ってきません。一応、こちらでも、これについて予備知識とか仕事の関係で文章の言っていることが最低限わかる人を選んで、見せてみたのですが、多くの人は単に戸惑っていたという感じで、私への反応に困ったというようでした。投資家の中にはバフェットの信奉者も多いので、一部の翻訳が出版されたりしていますが、発行会社の側で株式関係の事務仕事(株主総会なんかも含まれる)をやっていたり、IR関係の仕事をやっていたりという人には、知らないということか、あまり関係がないというような位置づけのようです。

というのも、今、第2四半期の説明会がようやく終わって、出席して下さった方々、とくにアナリストの反応を、ある人にお願いしてきいて貰っているのですが、その人の言によれば、出席者の正直な感想を聞きたがらない会社も多いのだそうです。決算説明会はIRにとって大事なイベントで、発行会社と投資家サイドが定期的にコミュニケイションする機会と、私は考えています。IR担当者としては、会社の決算や事業の状況、今後に向けての事業戦略などをよりよく理解してもらうため、資料をつくり、経営者と打合せをしながら開催に向けて腕を振るうことになるというわけです。で、もっと大事なのはその後だ、と私は思っています。事前にできるだけの努力をして実施した説明会について、出席した人は、果たして理解してくれたのだろうか、どのような感想を持ったのだろうか、会社に対して言いたいようなことはないのだろうか。私は、それがたいへん気になります。そうしないと、説明会が一方通行の会社が説明するだけの場で終わってしまいます。それは、一歩間違えば単なるPRになってしまいます。もちろん、説明会では質疑応答の時間があります。そこで、ある程度思っていることを話すこともできますが、時間の制約もあるし、他の人の前で言いにくいこともあるでしょう。あるいは、その後、出席したアナリストが取材に来てくれれば、1対1での話し合いの中で、少し話してくれるでしょう。しかし、そのようなアナリストの取材が頻繁にあるのは有名な大企業の場合で、それ以外の中小企業、とくに私の勤め先のような地味なメーカーの場合には、待っていては誰も来ていただけないというのが現状です。そこで、IR支援会社にお願いして、説明会の後で出席して下さった方々にインタビューをお願いしています。これは、発行会社本人には直接言いにくいこともあるということと、本音のところでどう思っているかを聞き出すのにはそれなりの経験が要るということからです。

さて、その支援会社では説明会後の出席者のインタビューをサービスのメニューとして入れていたのを、やらないでくれと言ってくるクライアント(発行会社)が増えてきたと言います。上で述べてきたような考えを持つ私としては、とても不思議に思いました。そういう会社は、説明会がどのように受け取られるか、会社のこと、今期の事業のことをどう思われているかに興味がないのか、そもそもそういう興味が期待値となって株価が形成されるのではないか、と思っているのですが。で、冒頭のバフェットの件です。バフェットの“手紙”は株主に向かって自分の考えはこうであると胸襟を開いて、コミュニケーションをしようとするものです。バークシャーの株主総会とともに、そういうものの極北と言えるものです。説明会の出席者の反応を聞かないというところには、このようなバフェットの姿勢は考え方の違うところとして興味をひくものではないかもしれません。

で、話は又変わりますが、今回の説明会ででてきた意見には、例えば、(今回の決算は前期の数値を上回り、メタメタだった前期から回復してきたことが結果として現われたものだったのですが)「回復が、一過性なものなのか、勢いが回復向かって動き出したのか判断できない」「経済環境の変化によるものではないか、経営戦略の面、経営努力の面によるものなのか」といった意見があったりとか、「このメーカーは高い技術を持っている(担当者としては、たいへん嬉しい)が、それがどうして業績の伸びにつながらないのか」というような意見があったりとか、説明会に対して「説明のメリハリがほしい」とか、色々言ってくれます。私には、こういう意見こそが次回の説明会に向けて、すごく参考になります。ここにあげただけで、次回の説明会で何を説明しようかというポイントを教えてもらえたし、進め方も直せるというものです。そして、言って下さった意見を次回の説明会に一部でも反映すると、意見を言ってくれた人は、そのことを忘れていないので、会社に対して信頼感を持ってくれることになると、説明会を定期的に開くのは、その積み重ねで投資家との信頼関係を一歩ずつ築いていく場になるのでは、と思っています。

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