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2010年12月 3日 (金)

大久保隆弘「エンジンのないクルマが変える社会 EVの経営戦略を探る」(2)

アメリカはオバマ大統領がグリーン・ニューディール政策を打ち出し再生可能エネルギーの開発と利用を前面に打ち出した長期政策です。ここで特に関係するのは、PHEVの開発による自動車産業の復興とスマートグリッド等による電力供給の安定化と効率化であろうと、筆者は言います。かつて、1990年代の初め、当時クリントン政権が打ち出した情報スーパーハイウェイ構想に敏感に反応することができず、インターネットをパソコン通信程度の利用価値と捉え、情報ネットワークが発達した後の壮大なビジネスチャンスを予期できなかった。そして、90年代半ばに日本にITの波が押し寄せたときには、すでにアメリカが主要な技術の規格を整え、通信サービスと運用システムを掌握していました。今回も、同じような波が押し寄せる可能性は極めて大きいと筆者は言います。しかも、今回はエネルギーと電力・電気産業、家電・エレクトロニクス産業、自動車産業など国の基幹産業を直撃する可能性があります。ここで、大きな鍵を握るのは、EVでもスマートグリッドでも蓄電池です。

この政策の狙いは、単に地球環境の保護、温暖化防止にあるのではなく、再生可能エネルギー社会への転換を政策的に誘導し、すでに支配権を奪われた石油エネルギー、電力、自動車、家電などの産業を強化し、再びこの分野で世界の強力なリーダーの地位を奪還しようとする意図が読み取れます。さらに政治的な脅威である中東諸国に対する政治的牽制、豊富なエネルギー資源を有するロシア、あるいはBRICs諸国に対する技術革新による牽制にもなります。そして、次世代エネルギーの核となる技術の獲得と規格標準化をリードし、アメリカに永続的な富をもたらす仕組みを作ることにあると筆者は言います。そして、筆者はこの政策の実現の鍵を握っているのは日本だと言います。アメリカの製造業は株主重視の経営により短期的な数字を追いかけるあまり、製品ポートフォリオ戦略の罠にはまり,成果につながる長期的な芽を摘み取ってしまう傾向にあります。液晶や二次電池がまさにそうなのです。そして、これらの開発を長期にわたって続け製品化したのは日本企業です。日本はアメリカが開発を滞らせた二次電池を携帯電話やカメラ、ノートパソコンなどの小型電子製品に応用して成長を遂げてきたわけで、アメリカが開発過程で越えられなかったいわゆる「死の谷」や「ダーウィンの海」を企業同士や社内の技術の融合、裾野の広い製造業での新製品活用で市場を形成しながら乗り越えてきました。グリーンニューディール政策に大きな影響を与えるのは、この日本の技術基盤とモノづくりの総合力だと筆者は言います。アメリカはポートフォリオを組み替えるうちに収益性のない事業は売却によって外部に放出してしまい、モノづくりの技術を融合させる基盤が足りていません。その意味で、日本がアメリカと対等な相互補完関係を築く絶好のタイミングであると筆者は言います。

電気自動車の歴史は古く、ガソリン自動車と変わらぬものですが、価格が高い、航続距離が短い、パワーが乏しいといった阻害要因があり、これらのほとんどと鉛蓄電池によるもので、リチウムイオン電池の登場により、一気に商品化が進みました。日本企業がEVなどのエコカーの開発を本格的に始めたのはカリフォルニア州が90年に定めたZEV規制によるものです。排ガスを出さない新車を03年には10%にするというものでした。後に、この規制は改められました。

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