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2010年12月 5日 (日)

大久保隆弘「エンジンのないクルマが変える社会 EVの経営戦略を探る」(3)

三菱自動車は電気自動車の開発を40年以上にわたり行ってきていました。90年初めにソニーがリチウムイオン電池の開発に成功すると、三菱自動車も自動車用の電池研究を始めました。そこでの開発上の問題は、リチウムイオン電池の性能の向上と安全性の確保でした。性能を上げると安全性に問題が生じるという二律背反性を有する難しい一面があります。06年ハイブリッドが注目されていた時期に三菱自動車はEVの本格的な商品開発組織MiEV推進部を新設します。それはトヨタやホンダに2~3周遅れでやっても勝負にならず、長年の実績のあるEVしかないという、意識であったという。商品化の難点は、電池性能と車体の問題で、実用的な効率から言えば、電池のユニットはコンパクトであるほうがいいが、航続距離を考慮すると多くの電池を積む必要があるという二律背反の問題でした。また、モーターとインバータは重電関係のメーカーである明電舎が手がけました。大手自動車メーカーであれば、電池もモーター、インバータも内製化を進めます。特にインバータはエンジン車でいえばエンジンとトランスミッションでありコアの部分です。これを明電舎が任されたことでコアを外に切り出された格好になりました。

一方、日産自動車はカルロス・ゴーンCEOのもと中長期的な計画のもとで進められました。オーチャードコンセプトと長期的な課題を技術開発によって果実としてユーザーに提供する意味合いで名づけられたもので、果実(技術、製品、機能)を育む果実園ようなの経営方針です.このような果実園経営の特色は、顧客に対する価値を最初に考え、定義し、時期を明確にして、それを最初にするためのプロセスを逆行するように手段、方法、必要資源を考え、各々の技術者の持つ知識・技能をつなぎ合わせて整理し、最大の顧客価値を発揮する果実が実を結ぶようにそれぞれに明示するところにある。この中でEVの誕生は、単にリチウムイオン電池が開発されたとか、いいモーターが完成したからというものではなく、EVという果実の価値を顧客視点ではかり、創造のプロセスを階層化して明確にする。電池のような基盤技術に対しても疎かにせず継続的、組織的に向き合っている。

このように、三菱自動車も日産自動車も経営危機を乗り越え、不遇の時代を長く経験し、その間にトヨタやホンダに差をつけられ、HVの開発に遅れをとり、その結果、EVに経営資源を傾注させて、トヨタ、ホンダの先を行く創造的な次世代自動車を完成させました。というわけで、両社にとって、EVは起死回生のイノベーションと言えます。

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