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2010年12月23日 (木)

ダニエル・J・レヴィンティン「音楽好きな脳 人はなぜ音楽に夢中になるのか」(1)

Leviin 著者は、ミュージシャンとして活動や音楽プロデューサーとしての活動の後、大学に入り直して研究生活に入った人。その主な関心は“私はだんだん、一生芽が出ないミュージシャンもいるのに、一部のミュージシャンはなぜあんなに人気が出るのだろうかと疑問に思い始めた。それに、作曲などできない人もいれば、いとも簡単に曲を作れる人がいることも不思議だった。創造力というものは、たったいどこからやって来るのだろうか?心を動かされる歌があるのに、何も感じない歌もあるのはなぜだろうか?そのすべてにおいて、音を聞き分ける「知覚」の役割は何だろう?ほとんどの人には聞こえないニュアンスが聞こえる、有能なミュージシャンやエンジニアたちの並外れた能力は、いったいどうなっているのだろうか?”それで、筆者は神経心理学を学び始める。その後、同じ関心を持ちつづけ心理学と神経学を交わったところにある認知神経科学の視点から、音楽の科学について本書を書いているという。

といっても、学術的な研究論文の体裁をとらずに、一般読者向けに音楽を巡る探究物語のような書き方をしている。著述の性格上、どうしても脳科学的な専門用語が出てきてしまうが、私は一切無視して、脳科学的な探究をする際の構成が、音楽を認知するときのストーリーに即した形になっているので、そっちに興味を持って読んだ。ここで、この本の魅力の一つになっているのが、著者が音楽を単なる研究対象の死体(生き生きとした楽しみを失った形骸)として扱っていないこと。音楽を楽しむことを失わずにいることが、著述からも分かる。それは、音楽に関する記述が、具体的であること。研究のよる探究の説明も、個々の音楽を譬えにして、実際に音楽が聞こえてくるように書こうとしている姿勢がこの本の魅力といっていい。

まず、筆者は音楽の用語(パーツ)の解明から始めます。

     ピッチ(音の高低)

     リズム

     音調曲線

     音質

     音の大きさ

     反響

     拍子

     調(キー)

     メロディー

     ハーモニー

音楽の主な要素の説明をした後で、しかし、現実の音楽の作曲や演奏では、これらの要素を切り離して考えることはせずに、相互の関係で考えます。このような要素の間の関係を研究するアプローチとして先駆的な役目を果たしたのがゲシュタルト心理学だと言います。ゲシュタルト心理学者たちが問題としたのは、特定のピッチの集まりであるメロディーは、ピッチ全体が上がったり下がったりしたとき、どのように同じメロディーのまま認識されるのかという点でした。これについては満足のいく理論的説明を加えることはできず、最終的には細部に対して形態が、部分に対して全体が、勝利しているということでした。一定のピッチの集まりを使ってメロディーを演奏するとき、ピッチの間の関係が同じなら、どれも同じメロディーになる。別の楽器で演奏してみても、やはり同じメロディーです。半分の速さにしてみても、こうした変化をいっぺんに加えてみても、聴く人はまったく問題なく元の曲がわかる。ゲシュタルト心理学は、この答えを導くことはできなかったものの、「ゲシュタルト群化原理」と呼ばれる原則を見出しました。もともと、視覚の世界においてたくさん木々の集まりを森として見るように、オーケストラの演奏で、トランペット一本の音だけを聞き分ける人はほとんどいません.同じ楽器の響きはひとつの群を構成しているし、オーケストラ全体で一つの群を構成することもありえます。人の聴覚系は、音の群化に倍音列を利用していると考えられます。個々の楽器から生まれた様々に異なる響きが、ひとつの楽器の知覚に結びつく。例えば、私たちにはオーボエやトランペットから出ている個々の倍音が聞こえるわけではなく、オーボエの音色、トランペットの音色として聞こえてきます。人間の脳は耳に届くいくつもの異なる振動数を分析し、きちんと正しいやり方で組み立てることができるわけです。浮遊するいくつもの倍音という印象を受けるのではないし、合成されたひとつの楽器の音に聞こえてしまうわけでもなく、脳はオーボエとトランペットに別々の心像を確立しており、両方がいっしょに演奏されている心像ももっています。それが音楽を聴いたときに音質の組み合せを認識する基礎となります。これらはそれぞれの楽器からの異なる基本振動数から異なる倍音の集まりが生まれるので、脳はコンピュータのような計算処理によって、何と何が組み合わさるかを判断します。このように音の属性に対応する神経生物学的サブシステムは、早い時期に、脳の低いレベルで分離することが判明しています。しかし、属性ははある一定の方向で結びつくと協調することも反発することもあるのは明らかな上、経験と注目が群化に影響を及ぼすこともわかっているので、群化のプロセスの一部は意識的な認知制御の下で行われていることになります。

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