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2010年12月28日 (火)

ダニエル・J・レヴィンティン「音楽好きな脳 人はなぜ音楽に夢中になるのか」(6)

人はどうやって音楽家になるのだろうか?音楽のレッスンを受けている子どもたちは大勢いるのに、なぜ大人になって楽器の演奏を続ける人はわずかになってしまうのだろうか?私の仕事を知って、音楽を聴くのは大好きだけれど、「何にもならなかった」と話しかけてくる人多い。私は、そういう人たちが自分に厳しすぎるのではないかと思う。私たちの文化では、音楽のエキスパートとただの音楽好きの間にある溝が広がりすぎて、みんなが弱気になっているのだ。そしてなぜかわからないが、それは音楽の世界だけの現象のように見える。ほとんどの人はシャキール・オニールみたいにバスケットボールをできないし、ジュリア・チャイルドのように料理できないのに、裏庭でバスケットを楽しんだり、友人や家族のためにご馳走を作ったりしている。音楽での溝の深さどうやら文化的なものらしく、現代の西欧社会に限られている。多くの人が音楽のレッスンは何にもならなかったと言うが、認知神経科学者の研究によれば、そんなことはない。子ども時代にほんの少しでも音楽のレッスンを受けると、まったく訓練を受けなかった人より効率的で発達した音楽処理用の神経回路が作られる。音楽のレッスンは上手な聴き方を教え、曲の構造と形式を聞き分ける力を伸ばし、好きな音楽と嫌いな音楽を区別しやすくする。

才能という考え方を正当化する最も強力な証拠は、音楽的な技能を、ほかの人より短時間で身につけてしまう人がいることだ。それに対して、才能には関係ないという見方─というより、練習によって完璧になるという見方─の証拠は、専門家や演奏の名手たちが実際にどれだけの訓練を積むかという研究から見えてくる。数学やチェスやスポーツのエキスパートたちと同様、音楽のエキスパートも、本当に卓越した技能を身につけるためには長い時間をかけて教えを受け、練習しなければならない。いくつかの研究によると、音楽学校の最も優秀な生徒は最も練習量が多く、優秀ではないと見なされた生徒の練習量の二倍にのぼることもあるという。

音楽のように学習の要素をもつ技能について、遺伝の影響を環境の影響と区別するのは難しい。音楽は親から子へと受け継がれる傾向がある。それでも、音楽家を親に持つ子どもは、音楽に縁のない家に生まれた子どもより、幼児期から音楽を学ぶように励まされる可能性か高い。たとえて言えば、フランス語を話す両親が育てる子どもはフランス語を話す可能性が高く、そうでない両親の子どもはそうでない可能性が高い。このとき、フランス語は「親から子へ受け継がれる」と言えるが、フランス語を話すのが遺伝の影響だと主張する人はいない。

音楽のエキスパートにはさまざまな側面がある。楽器を演奏する腕の冴え、感情を伝える力、創造性、曲を暗譜する特別な精神構造など。そして聴き手のエキスパートは、大半の人が六歳でもうこのエキスパートになっているわけだが、音楽的文化の文法を精神的なスキーマに組み込み、音楽的な期待を抱けるようになっている。それが音楽に美しさを感じる経験の核心なのだ。こうした多彩な専門技術を人はどのようにして身につけていくのか、神経科学は者はまだ解き明かしていない。それでも最近では、音楽の専門技術はひとつのまとまったものではなく、数多くの要素から成り立っていて、音楽のエキスパート全員がそうした異なった要素を等しく備えているわけではないということで、意見が一致してきている。なかにはアーヴィング・バーリンのように、誰もが音楽家なら当然もっているはずだと思う基本的要素をもたない音楽家もいる。彼は楽器をうまく演奏することができなかった。これまでにわかっていることから考えて、音楽の専門技術がほかの分野の専門技術とまったく違うことはなさそうだ。音楽はたしかに、他の活動では使わない脳の構造と神経回路を使うとはいえ、音楽のエキスパートになるプロセスには─作曲家でも演奏家でも─ほかの分野のエキスパートになるのと同じ性格的特徴の多く貸せ必要になる。なかでも、勤勉さ、忍耐力、やる気、そして昔ながらの根気強さをあげることができる。有名なミュージシャンになるのはまったく別の問題で、もって生まれた要素や能力より、カリスマ性やチャンス、幸運がものを言う世界だ。それでももう一度、大切なことを言っておきたい。私たちは誰でもが音楽の聴き手としてエキスパートであり、曲の好き嫌いに、ごく微妙な判断を下すことができる。理由をはっきり言えなくても、好きなものはわかる。

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