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2011年1月 6日 (木)

西田宗千佳「世界で勝てるデジタル家電~メイドインジャパンとiPad、どこが違う?」(1)

Ipad はじめに

日本経済の退潮が言われて久しい。その原因として取り沙汰されているのは、曰く中国の安価な労働力を背景とした価格戦略に負けた、あるいはアメリカのソフト開発力に負けた。著者は、これらの意見を否定しませんが、これらは氷山の一角でしかないと言います。では、日本を苦境に追い込んだ氷山とは何か。この氷山の姿をよく表しているのがアップルのiPadだと言います。日本の企業からなぜこのような商品が登場しなかったか、を詳細に分析していくと、それが分かると言います。

第1章 iPadは何がすごいか

それでは、まず、その見本も言うべきiPadの分析から始めます。まず、iPadを使って、まず気がつく特徴としては、動作が滑らかで軽快であること、バッテリーが長く保つこと、そして、5万円をきるという価格の安さです。さらに、手で触って操作できるという良さもあります。要は、安くて、便利で、楽しい。

しかし、パソコンとして技術的な先進性で評価すると、さほど注目すべき点はなく、パソコンしても品質の高いものとは言えない。例えば、マルチタスク機能、複数のソフトを同時に利用し、切り替えながら使う機能、が限定的で、音楽を流しながらの作は難しい。こうなっている理由は、処理負荷が増大し、バッテリー動作時間が減ってしまうのを避けるため。実際、iPadに搭載されているCPUはパソコンで一般的に使用されているものに比べると10分の1程度の性能だ。また、iPadのつくりを見ても、日本のメーカーならもっと軽く、小さく作れると言います。このような点から、iPadのモノ作りあり方は、日本のメーカーの発想と真逆の発想と言えるものです。

IPadが機械として高性能でないからと言って、快適であるという話とは矛盾しない。それはパソコンとは利用スタイルが異なるからだと言える。先ほどの話でiPadのCPUは性能では高いものではないが、ごく小さなものです。CPUが小型のため空いたスペースに大きなバッテリーを搭載できるわけです。つまり、iPadではバッテリーの搭載を優先して、他のパーツの占める面積を小さくしていると言えます。しかし、携帯電話には長時間の動作、薄型化と並んで多機能化の要求が高いため、日本のメーカーは省電力化に注力しながらも、容量を削減する努力をしています。これに対して、iPadは正反対の方向性、つまり、処理性能はそこそこでいいから、サイズを小さくするというものでした。

そこで、iPadのCPUです。これはアップルのオリジナルですが、日本のメーカーは、種類が豊富なことやコスト面などから外販品を購入しています。ではなぜ、アップルはオリジナルのCPUを使用しているのか。その理由の第一は、データを蓄積しているメモリーとデータをやり取りするためのパス速度を通常の2倍に高速化しているためです。これは実際に使用すると違いを体感できますが、そのためコストが上がり、普通はパス速度は抑えた製品作りがされます。しかし、アップルはコストアップよりも実質的な速度アップを狙える設計を優先しました。そして、理由の第二点めは、小型で必要十分のCPUをもっとも割りのいい技術で作ろうとしたためと言います。普通は見方のLSIは高性能化、省電力化のために、より微細な製造方法を用いますが、多額の投資が必要になります。それに比べれば、iPadのCPUはその方法を取らないので、小型でも価格を抑えられる。しかも、大量に生産するので、コストを下げられる。

というのも、同じCPUをiPadだけでなくiPhoniPodにも使用しているからです。実は、iPadiPhonの二つの製品の違いはサイズくらいで、設計はほとんど共通していると言っていいものです。つまり、iPadiPhonを大きくすることで用途を広げたものと言えるのです。サイズを大きくすればバッテリーも大きくなるし画面も大きくなる。どちらも利用者が望むものです。そこにはパソコンともスマートフォンとも違う機器の市場が存在することを見抜いていたと言う他ありません。そのために、アップルはCPUやOSを自前で持っている。OSについては、単に自前で持っているから、というのではなく,利用者が求める価値にあったハードウェアと、それを生かす能力をもったOSを持っていることが重要なのです。例えば、アニメーションをなめらかに動かしたり、アプリの切り替え時に画面全体を半透明にして動かしたりとより高度な処理をする場合GPUというLSIが必要になります。通常、家電ではCPUをはじめとした機器を作るために必要な機能を一つの機能にまとめています。そして、5年くらい前までは、高度なGPUを搭載したLSIは多くありませんでした。たとえ機能があっても、それを操作性向上につかえるソフト、つまりOSがなかったのです。ところがアップルは、自社でOSを持っているため、OSと搭載製品の開発タイミングを自分たちの事情で合わせることができるため、他社に先駆けてGPUを搭載し、その機能を生かした製品としてiPhoneを開発することができたのです。この有利さが、もっとも実感できるのが操作性の部分で、例えば、タッチセンサーのタッチの快適性やレスポンスの速さです。これはGPUをしっかり使い、最適化されたOSを搭載しているからです。筆者は言います。“実のところ、タッチ機能も、美しいグラフィックも、日本メーカーはiPhone登場以前より、ずっと模索し続けていた。しかし、それを徹底的に追求したのは、アップルが最初だった。”

しかし、一方では、アップルが完璧を求めているわけではない。例えば、アンテナ問題。あるいは、iPhoneのデジカメ機能には色むらが生じるところがあります。しかし、それが商品性に影響するかという点で、iPhoneには写真を加工するアプリが多数あり、ここで撮影以降の楽しみを充実させている。これを利用する人にとっては、写真の質だけで価値が決まるのではなく、その写真をメールで送ったり、ブログに掲載したりする場合には、自分で思うように加工できることの方がありがたいも多い。

これをまとめると、こうなる。消費者の位置に立ったときの利用上の価値を考え、たとえば、軽いこと、小さいこと、カメラや通信の精度は、必要なレベルに達していれば許せる。その上で快適な利用環境が作られている。仮に、電波・カメラ・サイズ・操作性の4点で携帯電話を評価するとすると、日本のメーカーのようにはじめの三つが95点で操作性が60点の携帯電話よりも、最初の三つが90点でも、操作性が90点という方が合計点が高い。さらに、多くの人に取り操作性の持つ価値は相対的におおきい。とすれば、差かさらに広がる。iPhoneの人気の秘密は、そのような配分のうまさにある。

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