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2011年1月26日 (水)

河合忠彦「ダイナミック戦略論」(5)

第3章 ダイナミック・スクール(1)

1990年以降のアメリカ経済はITバブルへと突き進む。この時は、成長軌道に乗ったとは言っても、各企業にとっては技術革新、グローバル化、規制緩和、消費者ニーズの変化などの構造的変化が連続する中での困難なものだった。このような現実の世界の変化に合わせて戦略論もダイナミックな環境下での企業の存続・成長を追究するものが求められた。ここでは3つのタイプ、法則型、不確実性型、プロアクティブ型についてそれぞれ検討する。

まず、不確実性型については、ダイナミックな環境変化を不確実性のレベルで扱うもので、不確実性に関する戦略論以外のところで発展した理論を援用するウォートン戦略論、マッキンゼー戦略論、それ以外のアイゼンハートの戦略論を検討する。

まず、ウェートン・ダイナミック競争戦略論は、経営者は企業が置かれた競争状況を理解し、優位性の新しい源泉を見出し、競争相手がすぐには対抗できない戦略を作るための枠組みが必要であるとして、次のようなものを提示した。すなわち、ダイナミックな競争戦略のプロセスを、①変化しつつある競争環境における優位性の理解、②競争企業の行動の予測、③ダイナミック競争戦略の代替案の定式化、④それらの代替案の中からの選択の4つのサブプロセスである。そして、各サブプロセスで用いるレンズやツールとして、①ではいかなる優位性を作る必要があるかに関するポーター理論を中心とするS--Pアプローチと、その優位性をいかに作るかに関するRBV、②ではゲーム理論、③では代替案を考える際に考慮すべき重要な要素の検討の仕方が示され、④では様々なシミュレーション手法が提示される。この理論の特徴として次の3点があげられる。第1の点は環境の不確実性の中身を体系的に論ずることはせず、環境にはさまざまな不確実性があるので、とにかく使える手法は総動員しよう、という立場をとっているということである。第2の点は、①~④の戦略プロセスに即して各種の手法が整理されていることである。しかし、手法間での統合の努力はされていないため、各サブプロセスのどの手法を組み合わせれば全体として整合的な戦略策定プロセスになるかについては何も触れられていない。第3の点は、ゲーム理論に主役の座を与え、他の諸手法は副次的に扱われている点である。このようにウォートン戦略論には体系性がない。これはゲーム理論を応用して競争不確実性の戦略理論に当てはめ、あとは関係のありそうなものを寄せ集めたためで、実践的には重要かもしれないが、ゲーム理論を中心に据えたため駆け引きの側面に限定されてしまっている。そして、複雑適応系プロセスやダイナミック戦略能力といった概念が見られない、といった限界がある。

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