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2011年1月27日 (木)

河合忠彦「ダイナミック戦略論」(6)

次に、マッキンゼー不確実性戦略論を検討する。ここでは、戦略形成のための環境分析は不確実性のレベルに合わせて行うべきだとして、不確実性を4つのレベルに区分し、それぞれについて分析手法を使い分ける。レベル1は、“確実な将来”で、戦略形成に十分な程度に将来を確実に予測できる確実性の世界であり、ボーターの競争要因図式などの標準的な戦略的手法を用いる。レベル2は“代替的将来”であり、ある選択肢から数個の結果がしょうずること、かつそれぞれの発生確率を推定できるような場合である。この場合には変数的シナリオを描けるので、それぞれの価値と確立を推定し、ゲーム理論などを用いてリスクやリターンを評価し決定する。レベル3は“範囲としての将来”であり、生じうる結果がある(連続的な)範囲で推定できるだけで、変数的シナリオを描けない場合である。シナリオの作成まではレベル2と似ているが、しかし、生じうる結果の全体を見渡す必要とポイントを絞る必要がある。レベル4は“真に曖昧な将来”であり、複数の複雑性の次元が相互作用しあっているために将来予測の手かがリが何もなくね範囲すら予測できない場合である。この場合は、できるだけ知りうる事実をシステマティックに考える。このような環境分析に続いて、戦略そのものの分析の枠組みを示す。それは戦略の中身に関するものと、戦略形成のダイナミクスに関するものから成っている。まず、戦略の中身を明らかにするために2つの次元を導入する。第1の次元は戦略的姿勢であり、これには3つのタイプがある。第1のタイプは構造形成であり、産業構造を自己にとって望ましいものにしてしまおうとするものである。第2のタイプは適応であり、現在の産業構造に適応していこうとするものである。第3のタイプは保留であり、環境がより確かになるまで様子を見守るというものである。そして第2の次元は行動である。戦略的姿勢を達成するのに必要な3つのタイプの行動を意味する。第1のタイプは大きな賭けであり、巨額の設備投資やM&Aのようなハイリスク・ハイリターンの行動である。第2のタイプはオプションであり、最悪のシナリオが生じた場合の損失を最小限に抑えつつ、最善のシナリオが生じた場合の大きな利益をねらうものである。第3のタイプは無難な行動である。続いて、以上のような戦略の中身を用いて不確実性の各レベルごとの戦略形成のダイナミクスが明らかにされる。まず、レベル1では大部分の企業は適応戦略をとる。そこで選択されるのは無難な行動といえる。レベル2以降では構造形成戦略は今冬から秩序を作りだすことができるが、レベル2では必要に応じてコースを変更できるようなオフションで補完することが求められる。また、適応や保留の戦略をとることも可能である。レベル3では、構造形成は特定の結果を実現しようとするものではなく、市場のおよその方向性を決定しようというものになり、大きな賭けに近いものとなる。また、保留戦略をとられることも多い。第4のレベルでは、構造形成戦略は相対的に低いリスクで高いリターンを得られる。保留は危険を伴うことがあり、オプションが必要となる。以上が理論の概要である。このような理論の特徴としては、第1に使える手法をすべて列挙している点でウォートン理論と同じだが、不確実性のレベルで使い分けようとした点で特徴的である。第2に、レベルを分けたと言っても不確実性の内容に即してではなく、不確実性の大きさによって分けただけで、原因まで立ち入ったものであない。第3に、戦略の中身の議論をしている点である。このようなマッキンゼー理論はダイナミック戦略論として①不確実性のレベルを分けていること、②そのレベルごとに戦略を使い分けるとしている点で、優れたフレームワークと言える。しかし、戦略的姿勢=戦略的意図のレベルに止まっているということは、その意図を具体的戦略として実現するにはいかにすればよいかまでは述べていない点も不満が残る。

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