あるIR担当者の雑感(17)~アナリストプラットフォームその後
昨年末、以前にここでも取り上げたJASDAQ市場のアナリストレポートが公開されました。最初に公開されたのは三社でした。私も、以前にこのブログで色々と書きましたが、そういうことは脇において、まずは、このような新しい試みに果敢にチャレンジしたこれらの会社、経営者や担当者の方々の挑戦的な姿勢や勇気には頭が下がります。また、やり方は別として、市場に上場している会社をとにかく投資家に分かってもらおうと試み、とにかく実行に移した大阪証券取引所の姿勢は、素晴らしいことだと思います。まずは、始まった事そのものは、慶事として、今後、これがうまくいくことを祈っています。私の勤務先は参加していないので、偉そうなことを言える立場ではありませんが。理想としては、これがうまく行って、他の会社も、「やっぱり当社もやるべきだった」と後から後から、参加会社が増えてきて、全部の会社が自発的に参加することでしょう。そして、それを投資家がJASDAQは面白いかもしれない、注目してくれる、ということでしょう。
で、肝心の内容としては、会社の事業紹介とその分析、最近の業績、今後に向けての事業の方向性、そしてリスク分析をある程度のボリュームの中で、書かれているようでした。多少バラツキはありますが、基本的なフォーマットがあって、それを押さえるようにレポートが書かれているようです。内容も一回の取材としては、よくまとまっていて、そんなに悪いものでもないと思います。これから、他の会社のレポートも順次公開されていくことになるでしょうが。この水準が維持できれば、それなりのアーカイブができるでしょう。そして、それらの会社について、年間二回の報告が都度公開されれば、たいしたものになるかもしれません。
しかし、だからと言って、私の勤め先の経営者に向かって、「これはいいです。是非ともウチも参加すべきです」と言えるものか、というプラスアルファのようなものは、あるようには思えませんでした。もし、私の勤め先の会社が参加するとしたら、真っ先にやって最初だからという話題性を享受するか、他のほとんどの会社が参加して、取り残されそうなるか、どちらかしかないと思っていました。今回の最初のレポートを見て、その考えは変わりません。
というのは、レポートについて、書かれる会社にとって(と言っても、私の勤務先の会社は、この20年で2~3回レポートを書いていただけただけなので偉そうなことは言えません)は、それはアナリストが投資家に会社のことを紹介してくれるというだけではないと思うのです。会社にとっても、市場からどのように見られているか、ということが形に残って現れてくるものなのです。そこには、経営に対する懸念や希望がでてくるはずです。このような情報を会社も得ることができる。自分の姿は自分で見ることはできないので、鏡に頼るしかありません。アナリストレポートは会社にとって、いわば鏡のひとつとして捉えられるのではないか。そういう意味で、今回公開されたレポートを、それぞれの会社がどのように読んだのかというのが、非常に興味があります。私が、もし、それらの会社の担当者だったら、物足りなく思うのですが。
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