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2011年1月24日 (月)

河合忠彦「ダイナミック戦略論」(4)

規範的戦略論の最後として、80年代後半に日本の企業進出によりアメリカ企業が自信を喪失していく中で生じてきたRBV(リソース・ベイスト・ヴユー:資源論)について取り上げる。RBVは企業の持続的競争優位性の源泉を企業が有する“価値があり、希少で、しかも模倣困難な各種の経営資源”に求める考え方である。この流れは、単一事業(専業企業)を対象とする研究と、多角化企業を対象とする研究に大別できる。まず、事業レベルRBVはバーニーの理論に代表されるが、戦略形成プロセスは環境分析と自社の強み・弱みの分析とからなる。環境分析はSWOT分析で言う環境の脅威と機会の分析に相当する。しかし、この環境分析には限界がある。それは、個々の企業の差異をごくわずかしか考慮していないことだ。ここで扱われるのは、企業が直面する脅威や機会における差異に限られ、具体的には規模の経済、製品差別化、生産コストなどにおける差異を反映するにすぎない。しかし、これらは戦略マネジメントで企業間の差異と見なされたものから見れば低レベルにすぎない。これを補完するのが、強み・弱みの分析である。この分析フレームワークとしてVRIO分析を提示するが、その前提として、企業を生産資源の束と考え、企業によりその束は異なり、これらの資源のうちあるものは模倣に非常にコストがかかるということ、そして、この資源と見なしうる企業属性を広く考えるということである。そして、VRIO分析は次の4つの問いについて分析を加えていく。第1の問は“価値に関する問い”である。ある資源が、企業が機会を利用しあるいは脅威を回避するのを可能にする、即ちこの意味で価値があるならば、それは強みであり、逆の場合は弱みになる。これはポーターの価値連鎖分析を応用できる。そして第2の問いは“希少性に関する問い”である。第1の問いをクリアした価値ある資源がごく少数の企業しか持っていないものであれば、競争優位性をもたらす可能性がある。つまり、第1と第2を組み合わせた資源、価値がありかつ希少な資源が企業に競争優位性をもたらす。第3の問は“模倣可能性に関する問い”である。価値があり希少な資源を持っていない企業がそれらを獲得したり開発しようとすればコスト的に不利になるというものである。このような不利をもたらす理由として次の4つがある。ひとつめはユニークな歴史的条件、ふたつめは因果関係の曖昧さであり、三つ目は社会的複雑性、そして四つ目は特許である。つまり、有利な資源を持つ企業は、これらの手段により有利性を防衛していると言える。ここまでのVRIO分析の3つの問いは企業に持続的競争優位性をもたらすものと言える。そして第4の問いは、“組織に関する問い”であり、第1~第3の問いの資源をフルに実現するための企業組織体制ができているかという問いだ。このようなバニー理論の特徴は第1にボーター理論が企業競争優位性と外部環境との関連でのみ論じていたのに対し、各種の企業の資源との関連を重要性を指摘し、より統合的な競争優位性の理論を構築したこと。第2に、ダイナミックな環境変化(不確実性)にいかに対処するかという問題意識はほとんどないこと。VRIO分析の限界についてバーニー自身が、この分析が有効なのは環境の機会と脅威が比較的安定的か予測可能な形で変化する場合で、安定的な場合には、競争優位性をもたらす資源の有用性は変わらず、予測可能な場合にも、ある程度の手直しによって有用であり続ける可能性があるからである、と。

次に企業レベルRBVを検討する。この理論の主題は企業の多角化を可能にするのはいかなる資源かということであり、一般的には企業が所有する資源で新製品を生み出すに有用なものと回答するだろう。その答えの内容には次の2つのタイプが考えられる。第1のタイプは、競争力のある製品を直接構成するものとしての資源であり、第2のタイプは競争力のある製品の創出を可能にする体制やプロセスである。その第1のタイプとしてプラハラッド=ハメル理論を検討する。1980年代以降アメリカでは、企業環境は大幅に変化し構造的移行期と呼ぶべき状況で競争の基礎も大きく転換した。このとき多くの企業がリトスラチャリングなど様々な施策を行ったが、それのいずれもが他社にキャッチアップを目指すものでしかないこと、戦略そのものではなく、その実行に関するものでしかないことだった。これに対し、日本企業は他社に先んじた新製品や神事器用の創出を重視する戦略で、好業績をあげていった。プラハラッドらは、産業構造の変化のマネジメント、基本的な考え方の変更、競争優位性の分析単位の再考などの必要性を示唆し、既存理論や考え方に代わる新たなフレームワークの構築を目指した。その第一歩となるのが、コアコンピタンス、顧客に特定の利益をもたらす新製品を次々に生み出すようなスキルや技術の束であり、競争優位性の源泉はそのようなコア・コンピタンスそのものにあると考えた。これを前提として企業間競争が展開される3つのステージが示され、それぞれにおいて企業がとるべき戦略を明らかにしていった。第1のステージは“産業の将来を見通す競争”であり、①5~15年後にはどのような消費者ニーズに応えようとするのか、②そのためにはいかなる新しいコンピタンスを得る必要があるか、③顧客とのインターフェイスをいかに再設計するか、などのようなイメージ競争で、このイメージから具体的な戦略アーキテクチャーをつくる。これはトップマネジメントの責任でなされる。第2のステージは、第1のステージの戦略アーキテクチャーに沿って、将来必要になるコンピタンスを構築し、体制をつくっていくステージで、第3のステージはポジショニング理論が対象としてきた段階である。次に第2のタイプとして、ストーク=エヴァンス=シュルマン理論を検討する。環境がダイナミックになるにつれて戦略もよりダイナミックにならなくてはならないと言う。ダイナミックな環境で競争優位との源泉となるのは行動のダイナミクスであり、企業の目標顧客の目から見て自社を競争企業から際立たせるような、模倣困難なオーガニゼーショナル・ケイパビリティを発見し発展させることだ。それは次の4つの原則からなる。第1に、企業戦略のビルディング・ブロックは製品やマーケットではなくビジネスプロセスである。第2に競争での成功は、企業のキープロセスを顧客に優れた価値を提供することを可能にする。第3に、企業は伝統的な戦略的事業単位を職能と結びつけ、かつそれを超えるサポート・インフラを整えそれらのケイパビリティを創出する。そして第4に、ケイパビリティは必然的に横断的で、最終的にはCEOが戦略主体となる。これらの理論とも、環境の変化を強く意識し、それを乗り切るために優位性をもたらす資源は何かと言う理論を展開している。このように企業レベルRBVはダイナミック戦略論的な性格が強いが、そこに大きな限界もある。それは、特定の固有の資源に優位性の限界を求める方法では陳腐化の恐れが大きいこと、そして、非常に不確実性の高いタービュラントな環境は扱えないことである。特定の固有の資源へのコミットメントが前提とされるために戦略の柔軟性が限定され急激な技術革新期にはむしろマイナスになる可能性が高い。

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