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2011年1月20日 (木)

河合忠彦「ダイナミック戦略論」(1)

Dinamic 以前に取り上げた「ホンダの経営戦略」が興味深かったので、同じ著者の体系書を手に取りました。本書が上梓されたのが2004年で、そのときの経済情勢が反映していることも考えながら、本書の目的を著者は言います。1990年代以降の失われた10年であらわになった日本企業の戦略能力やリーダーシップ能力の欠如、これに適切な処方箋を示せなかった経営戦略論の打開をはかること。これは、従来の戦略論が安定期を前提に構築されたものでスタティック戦略論だと著者はいいます。これに対して、環境が大きく変化する状況に対応するダイナミック戦略論を著者は提案します。そして、第2の目的として、その理論をもとに日本企業が1990年代に競争力を失った原因を探るということです。そして、第3に、経営戦略論のテキストを提供することが目的としています。私の関心は第1と第2です。第3の目的は研究者や学生向けでしょうか。

第1章 ダイナミック戦略論とは何か

最初に示したように1990年代の日本企業の苦闘に対して、経営戦略論は取るべき適切な戦略を示せなかった。ひの大きな理由は、環境変化がそれ自身が変化を起こすような内的な論理により変化しているが、従来の戦略論はそれを固定的な外的与件として考えている。これは安定期においては思考を単純化できる点で理論として望ましい面もある。しかし、一般に、変化が急激でスケールが、つまり、ダイナミックに起こると、その変化の内容が掴みにくく、掴めたとしても、どのような戦略をとればいいか分からない。このとき企業にとっては自社の製品への“需要レベルでの不確実性”が生じ、最終的には企業の“業績レベルでの不確実性”かせ生じる。この時に必要とされるのは、不確実性を扱いうる理論ではないか。本書の目的は、既存理論の検討を通じてダイナミック戦略論の構築の可能性を探り、それを踏まえて実際にその構築を試み、さらにその有効性を様々な事例によって検証することにある。

それでは、ダイナミック戦略論をどのように構築していくか、ということについて著者は3つの方法を提示しています。第1の方法はスタティック理論では構造的に安定的と見なされ“前提”として扱われていた要因を“変数”として理論の中に取り込み、スタティック理論で成り立った命題を特殊命題として含む、より一晩的な命題を導き出す方法です。これを法則型ダイナミック戦略論と呼びます。例えば、M・ポーターの理論に対して、前提として固定的に扱われていた“産業構造の変化”を組み込んだより一般的な理論を構築することは可能です。このような方法は、環境変化に対し、それと他の諸要因との関係を因果的に解明した上で対処しようもので、変化の方向性が見え始めた段階以降にはきわめて有効ではないかと考えられます。しかし、その以前の段階、すなわち、方向性が全く分からないというような不確実な段階では、かならずしも有効でないという限界があります。つまり、この場合環境の変化は、企業の外的なものとして、これに如何に適応するかと言う点から議論を進めるので、積極的に環境を動かすとか環境を自社に有利な方向に利用するといった議論は出てきにくい。

第2の方法としては、構造的変化が生じつつある環境では、ある戦略をとった場合にどのような結果が生ずるかは不確実であるため、不確実性のもとになる変化と戦略の結果の因果関係の解明は断念し、戦略の結果のレベルだけで不確実性を把握し、それに対処しようと言うものである。これを不確実性型ダイナミック戦略論と呼びます。

第3の方法は、法則型の限界を乗り越えようとするもので、法則型では環境の構造的変化は企業にとってコントロールできないものと前提され、それにいかに適応するかで議論が進められてきた。これに対して、企業がこの変化に影響を与えることが出来、また与えるべまだという立場から戦略論を構築しようとするものです。これをプロアクティブ型ダイナミック戦略論と呼びます。この第3の方法では、他の2つの方法とは違って、戦略の内容以前に戦略決定のプロセスが重視され、したがって戦略形成能力や組織能力が重要な意味をもってきます。

本書では、この3つの方法を検討しますが、著者は第1と第3の方法を基本としたいようです。それは、第1と第3の方法は不確実性のレベルに関して分業が成り立つため、両者を上手く使い分けて、あらゆるレベルの不確実性をカバーするダイナミック戦略論を模索したいためです。

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