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2011年2月18日 (金)

菊地正俊「外国人投資家が日本株を買う条件」(2)

第2章 外国人投資家が見る日本の政治・経済の課題

 日本株の方向性を決めるのに最も重要なファクターは、米中景気や為替などの海外要因であり、国内政治・経済要因の重要性は低い。内需は常に低迷し、政治も、経済や企業経営に大きな影響を与えるほどの改革が期待できる状態ではない。外国人投資家は、人口減少、長期デフレ、巨額の財政赤字、国際的地位の低下などの日本の構造改革問題を理解し、構造問題解決のためには強いリーダーシップが必要だと考えている。構造改革路線を掲げて誕生した小泉内閣が誕生した際には、日本の構造問題が解決されるとの期待が高まり、外国人投資家の日本買いは巨額になった。しかし、2006年に小泉首相が退任し、毎年日本の首相が代わるようになると、日本の政治に対する期待が失望に変わった。2009年に民主党政権が誕生すると、何らかの改革が行われるとの期待が一時的に芽生えたが、反ビジネス的な民主党政権の政策が明らかになるにつれて、外国人投資家は日本株を売り越した。

そして、外国人投資家のみる日本の政治・経済的な課題として

・スピーディーな税制改革ができないこと

 例えば、消費税について議論ばかりして引き上げができない

 法人実効税率が高すぎる

所得税最高税率の引き上げの動き

国債の低い利回り

 ・人口減少、少子高齢化が急ピッチで進み、先進国となってしまった事情

 外国人投資家の間では、日本は移民が必要だという意見が多い

 ・日銀の不十分な金融緩和

 外国人投資家から、日銀の金融政策に対する批判は強い。1980年代後半のバブル崩壊時には、遅すぎて行き過ぎた金融引き締めが、バブル崩壊の後遺症を大きくした。1990年代後半以降、日本は過去に例を見ない長期デフレに入り、人々や投資家にデフレマインドが浸透し、物価下落を前提とした消費・投資行動が見られるようになった。デフレ下で消費者は消費を抑制し、値下げ要求を厳しくする一方、企業は投資を抑制し、雇用を削減しようとする。インフレ率に数値目標を掲げて金融政策を行うインフレターゲットは物価抑制に有効でも、デフレ脱却には機能しにくいともいわれる。完全にデフレが定着する前に、思い切った金融緩和をしなかった日銀の政策が悪かったとの見方が外国人投資家には多い。

 日銀はいくらマネーを供給しても、民間に資金需要がないため、日銀に還流してしまうと反論する。お金を使う人がいなければ、または経済の実需がなければ、日銀の大量資金供給にもかかわらず、デフレは修正されないと主張する。マネタリストは、日銀の資金供給がまた十分でないからだと反論する。人々がお金を使わないのは、デフレ下で現金を保有していることが、経済合理的な行動であるからであり、インフレ期待が高まれば、お金をもって使うだろう。現在はデフレ下でのゼロ金利は、実査金利が高いことを意味するため、日銀は人々のインフレ期待を高めるような政策をとる余地があろう。

・経済成長戦略への期待

人口が減少し、財政赤字も巨額にのぼる日本が、内需主導の経済成長を遂げるといっても、信じる外国人投資家は誰もいない。

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