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2011年2月21日 (月)

菊地正俊「外国人投資家が日本株を買う条件」(5)

日本の大企業の個々人は、優秀といわれる。日本の組織では個々人が問題を認識しながらも、共同体の暗黙の掟、目の前の調和を破壊することに強い忌避感が生じる。結果、「空気の支配」による統治機能の不全状態が起きて、必要な意思決定ができなくなり、企業が極めて厳しい状態に陥る傾向がある。

 やるべきことがわかっていてもなかなか実行ではないことは、マクロ経済全体でも言えることである。社会保障制度改革、デフレ脱却、人口減少対策、財政赤字削減、選挙制度・公務員制度の改革など、日本の長期構造不況脱却のために必要なマクロ経済政策は長年議論されているにもかかわらず、実施されていない。現状追認や諦めのムードが蔓延り、今厳しい改革をしなくてもまだなんとかなるだろうと無為無策状態に陥り、日本全体が「茹で蛙」状態になっている。市場の反乱が起きて、債券や円が暴落する前に、外国人投資家に日本株が全く見向きもされなくなる前に、アジア人に衰退する日本に来たくないと言われる前に、日本経済の構造改革及び日本企業の経営改革を進めて、長年の閉塞感から早く脱却したいものである。

 著者は、数年前に「外国人投資家」を上梓しており、この本は、リーマン・ショック後の日本株の低迷の状態になったことに応じて、書き直したものと言えそうです。基本的な姿勢は、「外国人投資家」から大きく変化したわけではありません。しかし、日本株を巡る状況は危機的な状況にあり、私のような中小企業で市場に対面している者にも、それが実感できます。だから、著者の言いたいことは、よく分かります。その主張に沿うように、ここまで、全体の流れを抽出してみました。本書は、まとまった著作というよりも、個々の事象について著者が思っていること、主張したいことを、項目別に列記したようになっています。だから、まとまった著作にはなっていないで、散発的な印象です。そのせいもあって、このような実情を分かっている人や憂慮している人にとっては、わが意を得たりということになるのでしょうが、そうでない人にとっては他所事ともとられかねない中途半端なものとなっています。たとえば、現状がこうだと、いろいろな事柄が具体的に紹介されていますが、それぞれが並列的で、それぞれの事項の関連性や著者としてはどれがメインなものかは述べられていません。また、どうしてこのようなことになってしまったか、ということを著者は深く突っ込んでいないので、これからどうすればいいかは、取ってつけたような抽象的で他人事のようなことしか書かれていません。これは、著者には失礼で、本気で現状を憂慮しているのでしょうけれど、日本の市場をこんなようにしたのは、すべて企業が市場を向いた経営をしていないからだ、責任を押し付け、あたかも、自分は被害者であるかのようにふるまっているように見えます。本当にそうなのか、と私は考えます。すべて関係者に責任があると、一億総懺悔のようなバカバカしいことを言うつもりはありませんが、例えば著者は、政治が市場に逆効するような政策を進めていることに関して、懐疑的です。でも、政治家がそういう政策をとるということは、それで選挙票がとれるということです。ということは、市場関係者以外の政治家に投票するような人々は、市場に対して、そのようなマイナスの視線で見ていることの反映ともいえます。そのような状態となるのに手をこまねいていたのではないか、というゆうな著者を含む市場関係者は深刻な反省があったのか、とこの本を読んでいて著者に言いたくなりました。そうしたら、もっと突っ込んだ考察が出てくるはずです。そうしなければ、関係者以外の共感をえるのは難しいと思います。また、企業サイドからいえば、なぜ、日本企業の特殊事情と外国人投資家のむ特殊事情が相互に歩み寄れるような中庸な道を模索することを考えないのか、極端に外国人投資家に寄り添った道だけをしめせば、それでいいとする姿勢は、正論ばかりもっともらしく述べ立て、脇に立って、自分は傷付かない評論家のような印象を受けます。そうしたら、勝手にほざけと、企業の現場から罵倒されてしまうのではないでしょうか。そういう意味で、話のネタにはなるけれど、その程度で終わってしまいそうな著作にどとまっていて、たいへん残念な気がします。

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