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2011年2月 3日 (木)

河合忠彦「ダイナミック戦略論」(12)

次にダイナミック理論とスタティック理論に対して統一的視点を与える2つの概念を検討する。まず、ダイナミック競争優位性について、スタティック理論では環境重視のポーター理論と資源重視のバーニーらの事業レベルRBVがあり、両者の統合が望まれるが、多少の調停作業で解決できるものではない。そこで、両者の違いを検討しつつダイナミック競争優位性の概念を提示することにする。著者はポーターとバーニーの二つの図式は見かけ上の違いにも関わらず、バーニー図式をボーター図式に組み込んで両者を統合することが可能ではないかと言う。競争優位性をもたらすものについて、バーニーは資源を、ポーターはドライバーを上げている。ポーターは資源よりもドライバー概念の方が望ましい理由として、次の2つをあげている。1つは、相対的な好業績は資源から直接生まれると言うよりは、規模、活動の共通化、対的な統合など、相互に独立の効果を持つ様々なドライバーの総合的効果として実現するからであること。もう1つは、資源から活動が生まれることは確かだが、その資源を作り出したのは過去の活動や、新しい活動形態で必要になった外部資源を獲得するための経営者の選択であり、資源に先行すると考えられること。これらの理由は、資源とドライバーが密接に関連しており、ドライバーはフローとしての資源の一種と見なせると考えられる。これによりバーニー図式のポーター図式への組み込みが可能となろう。これを競争優位性の一般モデルとする。しかし、このようなポーターの図式は市場に不確実性のないケースに当てはまるもので、ダイナミックに変化し不確実性のある市場については適用できるものでない。例えば、収益と成長のバランスをいかにとるかが業績目標を考える際に重要になるであろう。そしてこれに対応して、当然、戦略も変更を迫られる。個々の事業ごとの事業戦略と共に、それらの事業のミックスをいかなるものについての企業戦略が中心的な位置を占めなくてはならない。とらに戦略が変われば、当然、競争優位性も、したがって、資源も変わる必要があるはずである。ここで、不確実性の高い市場に対して有効なダイナミック競争優位性の概念を考える。ポーター図式のスタティック競争優位性は安定的な環境下で必要とされるもので、ダイナミック競争優位性は不確実な環境下で企業に必要とされる競争優位性と区分できる。そして、不確実な環境をダイナミックな環境とタービュラントな環境の2つに分け、それぞれに一時的な競争優位性と持続的な競争優位性に区分すると4つのタイプに分類できる。

次に、資源の不確実性対応能力について検討する。不確実性のレベルによって競争優位性にいくつかのタイプがあるとすると、どのレベルの不確実性に対応きる能力を有しているかと言う視点から資源を評価できる。プラハラッドらは競争優位性におけるコア・コンピタンスの重要性を指摘したが、ここから資源の製品からの距離が大きいほど、需要不確実性の影響を受けにくいので、その資源の不確実性対応能力は高いという仮説が考えられる。このような議論を一般化すれば、競争優位性の源泉は、ポーターように限定的にではなく、より広く、企業のストック、フローを含むすべての資源空間中の“場”として求められるべきだといえるだろう。“資源の不確実性対応能力”と“製品からの距離”とは、ダイナミック戦略を求めて資源空間を探索する際のツールに他ならない。

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