無料ブログはココログ

« 河合忠彦「ダイナミック戦略論」(15) | トップページ | 河合忠彦「ダイナミック戦略論」(17) »

2011年2月 9日 (水)

河合忠彦「ダイナミック戦略論」(16)

第7章 即興的交響理論(1)

タービュラントな環境では戦略そのものを直接明らかにしようとするだけでは不十分であり、戦略形成プロセスを含む組織の側面から間接的に接近する方法が必要となり、記述的戦略論では、そのタイプの研究の蓄積があったといえる。この蓄積をもとに環境の変化にいかに対応すべきかについての規範的提言を行おうとする“コンフィギュレーション・スクール”がある。これから展開しようとしている“交響理論”もこれに属する。コンフィギュレーション理論として、ここで取り上げるのはミラーの理論で、彼は言う。戦略の12つの変数だけを取り出して分析することには疑問がある。変数間の関係は一定のコンテクスト(文脈)に置かれてはじめて意味を持つものであるのに、そのような方法ではコンテクストから切り離されてしまうからで、したがって、戦略と組織構造の関係を、多くの要因が関係しているコンテクストの中で分析することが必要である。非常に多くの要因が複雑に関係しているコンテクストを扱うため、彼は次のような仮説を提示する。“戦略、組織構造および環境の諸要素は、しばしば合体(凝集)し、あるいは構造的にむすびついて、限られた数のコンフィギュレーション(形態)を作り出し、高業績の組織の大半はそれらの形態によって記述できる。”これによれば、少数のコンフィギュレーションに焦点を当てることにより簡略化された分析が可能となる。彼自身は多くの記述的研究を残しているが、本格粋な規範的研究はなかった。ここでは、彼の残した手がかりをもとに交響理論を展開していく。

ミラーが残した手がかりは次のようなものだ。企業の競争優位性の源泉は、RBVの主張する組織の特定の資源ないしスキルにあるのでも戦略の特定の側面にあるのでもなく、“交響のテーマ”と企業の種々の局面─すなわち、市場ドメイン、スキル、資源とルーティン、技術、諸部門、意思決定プロセス─間の相補性を確保する統合メカニズムにある。高度のコンフィギュレーションが、シナジー、明確な方向と調整、模倣の困難性、資源と努力を集中する能力、コミットメント、スピード、経済などの優位性を企業にもたらすのである。このてがかりに基づいて、単純なモデルとしてS型交響モデルを次のように考えてみる。全権を掌握したトップ・マネジメントがタクトを振るって組織の進むべき方向性を“交響のテーマ”として常に明確に提示し、その実現に向けて組織のすべての単位や個人を統率して動員していくところにある。そこで、このモデルを“交響モデル”それも“強い(strong)指揮者”の場合のモデルという意味で“S型交響モデル”と呼ぶ。ここでは、トップは、組織と環境との適合関係を維持するために、必要とあれば、いつでも新コンフィギュレーションに移行すべきだとされている。このモデルの限界として、次のようなことが考えられる。第1に、S型交響モデルではトップ・マネジメント(の能力)にすべてがかかっているが、有能なトップが常にいるとは限らず、その意味でモデルの有効性が限られてくる。第2に、第1の点とも関連するが大規模な企業ではトップ・マネジメントが具体的ビジネスに関与するのは不可能に近く、目が届かないため一定程度の規模の範囲内で有効性に限られるのではないかということである。第3に、一挙に新コンフィギュレーションに移行するような構造的不確実性の場合の有効性に限界があると考えられる点である。

« 河合忠彦「ダイナミック戦略論」(15) | トップページ | 河合忠彦「ダイナミック戦略論」(17) »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 河合忠彦「ダイナミック戦略論」(16):

« 河合忠彦「ダイナミック戦略論」(15) | トップページ | 河合忠彦「ダイナミック戦略論」(17) »