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2011年2月 8日 (火)

河合忠彦「ダイナミック戦略論」(15)

次に、“発生メカニズム(ないしは要因)”の分析について考える。これは結局、優位性の“発生の場”において、それを実現する能力に帰着する。まず、“新規ビジネスへの進出”の能力については内部成長能力と外部成長能力に分けて検討する。内部成長能力は、研究・開発能力と事業化・推進能力に分けられる。研究・開発能力は内部成長のもっとも基本となる能力であり、産業の盛衰のある環境では、この能力抜きには長期的な存続は考えられない。また、事業化・推進能力は、開発された新製品をビジネスとして確立する段階で必要とされる能力、およびそのビジネスを維持・発展させて行く能力を意味する。次に、外部成長能力について見てみる。外部成長能力は、ビジネスの取得に関する買収能力と買収後の事業化・遂行能力が主要なメカニズムとなる。買収能力とは、M&Aのターゲットとなるビジネスは財務的に健全か、成長の可能性や持続力はどの程度か、歴史・企業文化・組織・人事システムなどの違いを乗り越えて円滑に事業を遂行出来るか、などの諸点を分析した上で買収価額を評価し、実際に買収を実現する能力を意味する。また、事業化・遂行能力とは、取得したビジネスを軌道に乗せ、さらに発展させる能力を意味し、具体的には、内部成長の場合の同能力に加え、組織文化その他の差異から生じるコンフリクトの処理能力なども含まれる。これらのような内部成長と外部成長を二者択一の戦略として論じてきたが、現実には両者の折衷的な形態がありうる。外部で確立する以前にあるビジネスを取得し、その後は内部で育成するというのは典型である。次に、“既存ビジネスからの撤退”能力については、既存のビジネスからの撤退は困難な仕事であり、この遅れが損失を拡大しリストラのチャンスを失うケースが多い。その最大の原因は、撤退の必要性についての認識の遅れと決断力の欠如であった。最後に、“新旧ビジネス間での進出と撤退のコンビネーション”能力について見ると、その中心となるのは資金調達能力である。この資金繰りは内部成長、外部成長のいずれも重要な問題である。より重要な進出と撤退の全体についての資金繰りである。その基本は既存ビジネスからの撤退によって得られる資金の新規ビジネスへの進出への投入だが、それで不足する場合には外部調達資金が必要になる。以上で狭義のダイナミック優位性分析を終了し、この分析で“あり”とされた優位性が持続的なものかどうかを分析する“ダイナミック持続性分析”について検討する。これは、さきに分析した各能力について、模倣困難性を尺度として見て行くのが一般的といえる。

このようなダイナミック・ポジショニング理論の適用上のポイントを明らかにして、その特徴と限界について検討していく。まず、適用上のポイントについて[BP+BCG]マトリックスに焦点を当てて考える。第1のポイントはBPマトリックスとBCGマトリックスの使い分けである。一般論としての使い分けは既に検討したが、実際には企業はその価値観や個性によって、自社に適した方法を選択するのが望ましい。BCGマトリックスについてはテクニカルで合理的な決定が可能だとしても、BPマトリックスでは、より主観的・価値的な判断が不可避であり、戦略形成能力が問われると言える.環境がよりダイナミックになって不確実性が高まれば高まるほど、BPマトリックスのウェイトが高まり、重要度が増す。これに関連して企業トップに特に要請されるのが、企業のあるべき姿を示す企業理念と進むべき方向性を示すビジョンの確立である。第2のポイントはBPマトリックスでの環境分析に関するものであり、ポートフォリオの決定に際しては、①産業構造の変化、②その変化のスピードの増大、のいずれに不確実性の源泉があるかを十分に考慮し、それを基礎としてミックスを決定する。これは、主観的・価値的になりがちなBP分析の客観性を高める上での重要なプロセスと言える。第3のポイントはBPマトリックスでの優位性に関するものであり、この決定に際しては、第2のポイントにおける外部環境の分析に加えて、自社の優位性の源泉を十分に理解し、それと適合的なポートフォリオを決定しなくてはならないことである。

最後に、ダイナミック・ポジニング理論の特徴と限界を検討する。ダイナミック・ポジショニング理論の特徴として、第1には、クロス・セクションではシナジー効果よりもリスク分散を、ロンジテューディナルにはコミットメントよりも柔軟性を重視する点で不確実性型理論と親和性を持っている点がある。第2に、プロアクティヴ型理論との親和性もある点である。法則的と見える環境変化も人間の働きかけを受けて様々の程度に変容しうるので、ダイナミック・ポジショニング理論の法則にも、それが当てはまるからである。このようなダイナミック・ポジショニング理論は、ダイナミックな不確実性の高い環境だけでなく、タービュラントな環境への適用可能性をもっている。しかし産業の盛衰の予測があまりにも困難な場合には、ダイナミック・ポジショニング理論は、あくまでも位置取りであり対象の何らかの規則性を前提とするため、対応不可能な場合が出てくる。このようなインタービュラントな環境については、プロアクティヴ戦略論に、その可能性を探っていく。

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