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2011年2月11日 (金)

河合忠彦「ダイナミック戦略論」(18)

バーゲルマンは、多角化した大企業における社内起業、すなわち製品開発プロジェクトの段階から新規ビジネスになるまでのプロセスに関するものであったが、DRAMからMPUへのインテルの戦略転換についての研究をもとに、“戦略形成と組織適応についての組織内生態学モデル”を提唱した。バーゲルマンによれば、長期的に成功している企業には、[変異─選択─保持]という進化論的プロセスによって説明でくる2つの戦略形成プロセスがある。1つは“誘導されたプロセス”であり、トップのビジョンの実現のプロセスである。ここでは、現場レベルでの現行の戦略の遂行のために様々な改善や工夫の試みがなされ、これが“変異”を発生させる。しかし、そのままでは混乱するので、戦略実現のための様々な管理メカニズムによって“選択”がなされる。これが“構造的コンテクスト”である。もう1つの戦略形成プロセスは“自律的プロセス”であり、現行の戦略やトップのビジョンの範囲外での、現場レベルでのイニシアティブである。これが“変異”の源泉になり、次いで、ミドルにより資源獲得のためのトップへの売り込みがなされ、その中から選択がなされることになる。こうして選択されたものが実行されるが、これによって新しい組織学習が進展する。これまで企業内になかった新しい技術、知識、コンピタンスなどの獲得を意味する。また重要なのは、トップが新しいビジョンを形成することである。これらの戦略プロセスの区別を踏まえてバーゲルマンは次の3つの命題を導き出している。第1の命題は、長期的に成功している企業のトップは、戦略そのものの内容とともに2つの戦略形成プロセスの質を高めることに関心を持っている。第2の命題は、長期的に成功している企業のトップは、既存の戦略について自己のビジョンを持っているが、同時にボトムアップの実験と選択の内部的プロセスをも維持している。第3の命題は、リオリエンテイションに成功した企業では、失敗した企業よりも、それ以前に実験と選択の内部的プロセスを経ている企業の比率が高いということである。このようなバーゲルマンのモデルに対しては、次の諸点を指摘できる。第1に、場帆ゲルマンのモデルから、タシュマン=オーライリのモデルによるW型交響モデルを導くことができることである。ただし注意すべきは、トップの役割が弱い理由が両モデルでは異なることだ。タシュマンらのモデルでは強い指揮者が必要なはずのリオリエンティション期の認識が不十分なために、結果的に弱い指揮者しか想定しなかったためであった。これに対して、バーゲルマンの場合は、リオリエンティションしされる現象の多くは自律的プロセスによって発生自体を未然に防げるので、それだけ強い指揮者の必要性は低下すると考えているためである。第2に、バーゲルマンモデルは大企業での新規戦略の形成におけるミドルの役割を重視し、それがトップの追認を経て企業のプロアクティヴな適応を可能にする点をとらえ、ダイナミック戦略論として、タシュマンらのモデルより一歩進んだものになっている。第3に、バーゲルマンモデルは“即興”の舞台設定に成功している。ミドル自律的な戦略行為は、どちらかというと突然に、つまり即興的に生ずるものとされ、これをトップが企業のフォーマルな戦略に取り込んでいくという連係プレーが考えられていることが重要である。しかし、あくまでも舞台設定にとどまっていることが限界ともいえる。

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