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2011年3月 1日 (火)

大竹文雄「経済学的思考のセンス」(5)

日本で所得格差が拡大していると感じている人々が多いこと、勤労世代で消費の格差拡大が進展してきた。このように資産や将来所得の格差が拡大しているなかで、人々は税制や社会保障を通じた所得再配分政策の強化を指示しているのだろうか。これに対して、低所得者は再配分政策の受益者なので支持するだろう。しかし、今は低所得者でも、将来高所得になると予想している人は再配分制度の強化によって逆に生涯所得が低下してしまう可能性がある。逆に、現在は高所得でも、失業の不安を持っている場合のように将来低所得になる可能性が高い場合再配分政策の強化を支持するだろう。このように所得再分配政策は所得に対する保険制度と考えることもできる。そうすると、所得再分配政策を支持するのは、危険回避的な人だということになる。このように人々の所得再分配政策に対する考え方は、現在と将来の所得水準、リスクに対する態度などの経済的要因で決まるが、現実の所得再分配政策がそれを反映するとは限らない。たとえば、このような経済的要因以外にも、人々の中には、運が貧困の原因なら再分配政策を支持するが、怠惰が貧困の原因なら、自らを怠惰でないと信じている人は再分配政策を支持しないだろう。

統計的に見ると、日本の所得格差が大きく上昇したのは80年代であって90年代ではない。この点は、所得格差拡大論が90年代末から注目されだしたことは異なる。しかも、日本で80年代に格差が拡大した最大の理由は、人口の高齢化であった。もともと所得格差が大きい高齢層の人口比率が上昇したのである。90年代には、労働人口の高齢化が収まったため賃金の不平等化の速度は低下してきた。それでは、人々は、格差拡大を最近になって実感しているのであろうか。それは、中高年を中心に成果主義的な賃金制度の導入による今後の賃金格差拡大予想や、失業・ホームレスの増加が、人々に格差拡大を実感させているためと考えられる。しかし、所得格差の格差が生じていることを認識している人が多いにもかかわらず、小さな政府を目指す政策への支持も高い。

今まで経験で、学歴や持っている情報量とは関係なく、本当に頭のいい人だと感じるのは、自分の言葉で話すことができる人であることが多いです。自分の言葉で話すというのは、知識を本に書かれたそのままを暗記しているのではなくて、いったん自分の中で消化しているために、必然的に自分なりの言い方に変換されて話すことになる。自分の中で消化されているということは、例えば、実践の中でその知識をまく活用できる準備ができているということです。だから、具体的な場面でどうするかという考察が背後に含まれている。この著者には、それを強く感じます。付け焼刃の文献からの引用で、書いている人も本当はよく分かっていないのではないかと思わせるような、単に難解な言葉が並んでいるだけの文章とは正反対のものです。そして、この本の特徴は、そういった生きた知識が述べられているだけに、読書メモが書きにくいことです。些細な語句でも日常の具体的な場面での実践を踏まえた考察がされているので、深読みができてしまうので、単に語句を知識としてメモしておこうとすると、背後の膨大なものも書きたくなってしまう。実際の実践の場では状況が整理されているわけではないので、バラエティを考慮して、様々な部分で関連性が張られている。だから、読み返すたびに発見がある著作だと思います。生きた知識というのは、こういうものだ、と思いました。こういう本の場合は、メモしにくい。

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