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2011年4月23日 (土)

熊野純彦「和辻哲郎─文人哲学者の軌跡」(4)

満州事変を契機に日本は戦争に傾斜していくことになる。「現代日本と町人根性」を発表する。和辻は資本主義の精神はブルジョワ精神であり、まさしく町人根性であるといいます。そして、まず帝国主義国家による帝国主義的な戦争を人倫に悖るものという。そして、注目すべきことは、町人根性への批判は、『倫理学』における経済的組織論の根底に流れる発想と通底していることです。まず、和辻はマリノウスキーに依拠しながら西太平洋の人類学的観察から、次の点を指摘します。まず、未開民族において労働は価値を持っている。次に経済学の教科書が指摘するような原始的経済人を否定します。西太平洋の島民にとって労働は飢えのような直接の需要を満たすためではなく、非常に複雑な社会的・文化的動機によって労働するといいます。目指されているのは、利益ではなく、伝統的な部族の価値基準にしたがった価値付けなのだといいます。さらに、必要に駆られた物々交換という商業の始原も否定します。交換は部族間の交際のために行われるといいます。これに対して、近代以降の経済活動の目指すのは欲望を満足させるものの生産であり、人々がこの活動において取り結ぶ関係は生産のための手段に過ぎない。そこで、そもそも経済活動において結ばれる人間関係は、欲望を目的としたものではなく、人倫的組織としてそれ自身の意義を保っていた。それが欲望充足と人間関係の地位が逆転したのが近代なのだ。これはヨーロッパ近代における特殊な現象であって、まさに欲望の体系として人倫の喪失感に他ならないといいます。

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