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2011年4月 9日 (土)

あるIR担当者の雑感(21)~トップが語る

日立製作所の中西社長さんが記者会見を行ったことが報道されていました。日立製作所と言えば、福島の原子力発電所の製作にもかかわった渦中の企業です。原子力発電所の状態は終息に向かっているとは言えず、未だに予断が許されないという緊急事態が続いている状況下での記者会見で、このような時に、よくやったものだと思いました。感心しました。内容は報道されているので、ご存知かと思いますが、福島の原発に対しては、3月11日の時点で対策室を設置し態勢をとっていたとのことで、現在は300人が原発に入って作業に当たっている、原発事業について今後どうするか(訊く方としては、一番ききたいことですが、現に、今、事態の収拾に向けての真っ最中の側としては、こんな時に、答えたくない質問だと思います)ということに対しては、安全性を加味して事業は継続させていく、と答えたそうです。今、こんなことは言いにくいと思いますが、この社長は、記者会見をすれば、こういう質問が出てくることは、当然予想できることで、その覚悟の上で、敢えて言ったのだと思います。そのプレッシャーは、私には想像できませんが、すごいものだと思います。とくに、このことは、福島原発の現場で作業している原子力事業関係の日立の社員には、大きな力づけとなったのではないかと思います。彼らの今やっていることは、単に事態の収拾だけでなく、将来に向けたものという位置づけができることになるわけですから。

トップが力強く、語るということは、社内に向けては、もとより、IRとしても、投資家の人たちには、素晴らしい情報発信になるのではないでしょうか。一番知りたいときに、一番知りたい情報をトップ自らが発信してくれる。このことは、もちろんですが。それ以上に、この状況でトップが力強く語る、ということは、そのトップの覚悟やリーダーシップが鮮明に印象づけられるものではないかと思います。中西社長は記者会見の中で、数か月かかると考えていた生産体制の復旧は9割がた進んでいるとのことで、日立製作所の本拠地の日立市は被災していて、原発対処もしながら、ここまで進んでいる日立の底力というのはすごいと思ってしまうわけです。

で、こういうすごい会社のIR態勢はどうかというと、ホームページは東日本大震災体制の専用ページがつくられ、ニュースリリースがたびたび出され、CSRのページは震災対策とつながるなど、それなりのことが為されているようです。しかし、惜しむらくは、今般の社長の会見の概要だけでも出しておいてほしい。

でも、こういうのを目の当たりにすると、トップが語るべき時に語るべきことを力強く語る、これ以上のIRはないですね。と思います。これがなかなか、できないものではあるのですが。

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