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2011年4月13日 (水)

三品和弘+三品ゼミ「総合スーパーの興亡」(3)

これを次に経営管理の点から見ていきます。まず、三社の売上高の推移を見て、その後営業利益率の推移を見てみると、ダイエーの凋落に対して、イトーヨーカ堂は売り上げが安定していた一方で営業利益率がダントツに高いことが分かります。ダイエーの全盛期でも営業利益率ではイトーヨーカ堂が遥かに勝っていたのです。さらに、売上原価率を比べて見ると、イトーヨーカ堂の粗利益率は他の二社に比べて6ポイント近く高いというデパート並の高さだったのです。では、イトーヨーカ堂はデパートのように、比較的利益を大きく取る厚利少売というようなスタイルだったのでしょうか。これを確かめるため商品回転率を見ます。これを見るとイトーヨーカ堂は他の二社に対して商品回転率でも非常に優れ、上回っています。これらことから、イトーヨーカ堂が単に、商品を高い利幅で売っていたわけでも、安売りで商品をたくさん売っていたわけでもないことが分かります。そして、販売・一般管理費を三社で比べて見ると、明確な差は見られません。しかし、その内訳に各社の特徴が現れます。それは「従業員重視のジャスコ」「顧客とのコミュニケーション重視のイトーヨーカ堂」「削りまくるしかなかったダイエー」です。この中で、特徴的なのはイトーヨーカ堂です。販管費の増加傾向の中で、他の費用は抑えることに成功していながら、宣伝装飾費の割合は逆に増加しています。これは顧客とのコミュニケーションに関するコスト大切なものだとしては安易に削らなかったと言えます。そして、分析はさらに進み、営業利益の中のその他の営業利益に着目します。これが特徴的に多いのはジャスコです。原価率や商品回転率、販管比率を見てもパッとしなかったジャスコですが、ここで8%近い数値を稼いでいます。ジャスコは、ここで勝負していたといっても過言ではありません。その中身は主に不動産賃貸収入などです。端的に言えば、テナントから得られる収入です。一方、貸借対照表に目を転じて、新規出店のための資本調達方針を探っていきます。イトーヨーカ堂の自己資本比率が一貫して高い水準にあり、他の二社に比べて財務的な安定性を重視した慎重な経営方針を持っていることがよみとれます。人にたくさん借りてでも商品をたくさん仕入れてたくさん売るのではなく、なるべく人に頼らず、自分のお金で買える範囲で利益を上げていこうという方針です。この内訳を見てみると各社とも資本金部分に大きな差異はありません。次に利益の内部留保による自己資本の増加については、配当性向についてみると、注目すべきは、イトーヨーカ堂の配当性向の低さで、利益を内部留保し自己資本の強化に努めていることになるというわけです。目先の配当より将来のために利益のために資金を蓄えるという方針です。かつてのダイエーが手厚い配当政策を行っていたのと好対照といえます。一方、負債額を見てみると、イトーヨーカ堂が一貫して低い水準にあります。これらから、三社の違いを次のように言うことができます。理恵区立などの「質」ではなく、売上高という「量」の成長を目的として、負債を利用してでも拡大路線をとってきたダイエー、逆に、負債の利用は抑え自己資本比率を高めるといった堅実路線を取り、効率良く利益を出してきたイトーヨーカ堂、小売業だけで勝負するのではなく、デベロッパー事業などにも力を入れ、時代に合わせて様々な方向から利益を得ることを目指したジャスコといった各社の方針の違いを見ることができます。

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