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2011年4月10日 (日)

あるIR担当者の雑感(22)~ある売り込み

先日、ある売り込みを受けました。

IRは関係づくりだという面もあり、情報を得ることもあるので、この関係のアポイントには、できる限り応じることにしています。しかし、今回のアポイントの電話は、ちょうど打ち合わせ中にありました。その打ち合わせがちょうど佳境にあり、お座なりに断りを入れようとしたところ、相手が熱意をもって話してきたので、断りきれず応じることになりました。

で、実際に会ってみると、中身としてはデータベースシステムの開発会社の人を同道してのプレゼンで、電話でアポをとってきたのは、代理店のような会社で、若い営業担当者でしたが、その商品そのものに対しては、特にここでコメントすべきことはありません。しかし、その後の対応には、教えられました。

少し、些末な議論が入り込むことになりますが、こういうことです。プレゼンに対して、私は断り旨をメールで送りました。売り込まれたのは、IR活動の対象となる機関投資家などの状況、どういうところに投資しているかとか、所属するファンドマネージャーの動向などをデータベース化して、専用のウェブサイトを設け、そこに登録したIDでログインして、ミーティングや説明会のセッティング等に役立てようというものでした。発想としては(プレゼンでも売り文句になっていましたが)IR活動を会社を売り込む行為と位置づけ、そのためのマーケティング・ツールとして活用するというものでした。

しかし、この会社は以前にも売り込みに来たことがありました。どうやら、プレゼンの際には、そのことは情報として持っていなかったようでした。私としては、マーケティング・ツールを売り込む会社が、自社の営業活動をデータ化してマーケティングしていなかったということで、信頼できず、私はプレゼンに対して興味を持てず、断りました。

で、話を戻すと、断りのメールには、以上で述べたようなことを理由として書き添えました。ふつうなら、そこで終わりです。ところが、この会社、というか、この担当者は、私が送ったメールの趣旨を上司に伝え、(どうやら、社長にも伝わったらしい)、プレゼンに同道した開発元に、意見として伝え、改善を求めたということを、後日、私に連絡してきました。

飛び込みでアポをとり、1度しかあったことのない会社の担当者で、しかも、その会社は売り込みを断ったところです。また、私の勤め先は、ここで何度も書いているように、投資の対象としては、パッとした会社ではありません。市場では、取るに足らないところでしょう。強いて言えば、売り込みに対して興味が湧かなければ、無視すればいいところを、とりあえず理由を付した断りのメールを送ったことぐらいでしょう。これに対して、真正面から応えるような動き、多分、担当者や会社にとっては、契約が取れるわけではないので、当面、一文の得にもならない行為でしょう。それを敢えてした、ということに感心しました。

しかも、担当者が動く、ということにとどまらず、製品の開発会社にも連絡したということは、社長も通して、会社として連絡したはずです。ということは、会社として動いたことになるでしょう。代理店と開発会社の力関係からいえば、あまり気軽にできることではないはずです。それも、使用しているユーザーからの意見ではなくて、単に一度売り込んだ先からの意見です。そこに、その会社の姿勢というのか、誠意というのか。また、営業の若い担当者の意見が社長まで、しかも、どちらかというと会社に対して良くない意見が迅速に伝わるという風通しのよさ、というものを非常に感じました。誠意を感じるとか信頼するとか、こういう効率的な活動というようなことには反するような、言ってみれば、余計なことから伝わることなのかもしれません。

とくに、私が関わっているIRというのは、言うなれば会社を売り込むようなものです。いま、業績がよくて伸びている。それはそれでいいのでしょうけれど、必ず、企業活動にはいい時もあり、悪い時もある。投資家は企業の状況が悪ければ株を売ってしまえばいいという見方もあるでしょう、ある程度中長期的に投資しようという場合には、目先だけではなくて、いい時、悪い時、その会社がどうなのか、投資先として信頼できるのか、ということも大切なことになると思います。その時に、投資家と会社との間をつなぐのがIRの仕事だと思っています。そう考えると、今回の売り込みに関するやり取りは、たいへん教えられました。

そして、開発会社の社長より、私のところに直接電話がありました。お詫びかたがた、話をしたいとのことで、社長自らが連絡し訪問してくるということで、なおさら感心したわけです。

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