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2011年4月12日 (火)

あるIR担当者の雑感(23)~ある売り込み、後日談

ある売り込みということで、ここに、感心した話を載せましたが、その後日談です。端的にいえば、がっかりしたということです。続きから話すと、前回感心したと申し上げた代理店の若い担当者と開発会社の社長さんが見えられました。最初のあいさつと、お詫びの後、少し話した後で、その社長さん、私の勤め先は機関投資家が1社しか投資していないから個人投資家に対するIRを行うべきだと仰り、ついては個人投資家や個人株主のテータベースのいいツールがあると製品説明を始めたのでした。

たしかに、営業的には、売り込みに行った先が何も反応がないよりは、今回の私のように真正面から反応した先の方が見込み先としては、無視した先よりも見込みがあるというので、ここをプッシュしようというのは正しい。だから、売り込みをするというのは納得できないことではありません。

しかし、今回は、その会社の姿勢に対して、私の場合は真正面から信頼できないということで、その理由をメールで送り断ったわけです。それに対して、お詫び、その内容について話をしたいとのことでした。私は、そこで誤解をしてしまったのでしたが、株式市場に対する議論とか、IR活動に関する議論などをするものと思っていたのでした。というのは、これまで私が出会ったファンドマネージャーやアナリストのような市場関係者は、それぞれに利益を追求する厳しい環境で勝負している人たちですが、市場とか市場に上場している上場会社を盛り立てていこうという考えを根底に持っている人が多かったからです。彼らとしては、上場会社が元気で市場が盛り上がらなければ、自身の商売も厳しくなるわけですが、それだけにとどまらず、日本の市場を何とかとしようとか、日本の企業を応援しようというような思いのようなもの、市場で商売をしているからこそ、市場に対する敬意のようなものが感じられたわけです。私の場合も、端くれとは言え上場している会社のIR担当として、最低限の市場に対する敬意とか、それだけにそういう人々に対しては根本的な信頼感を持っているわけです。でなければ、積極的に企業情報を伝えようなどということはできません。そこには、暗黙の信頼関係というのか、お互いに敬意を持つような関係が前提されていると思っています。それで、今回は、その社長さんもIRコンサルとしてのキャリアが長いということもあって、さっき書いたような話ができると思っていました。残念ながら期待外れでした。

しかも、前回の売り込みに対して私が言ったことは、考慮されていないような売り込みで、話を聞いているうちに残念は失望に変わりました。以前、このブログに書いたように、私の考え方では、広く無制限な対象に向けるよりは、差別化を図りある程度対象を絞って、まずは知名度の低い小さな企業でも有効なところからIR活動をしていこう、それで徐々に対象を広げていきたいという考えでした。それを少しお話したら、趣旨はよく分からないようでしたが、マーケティングではターゲティングに当たるとして、個人株主のデータベースがあるから、そこから地域別、年齢別、投資目的別の検索が可能だ、というような売り込みでした。とりあえず、私の基本的姿勢としては、個人投資家に向けて会社を売り込みましょうということよりも、どのようにしてIRをしていくか、売り込むというよりも関係づくりをどのようにしていくかが大切で、このようにただ売り込むというのは、そもそも姿勢が違うということなのです。それは、個人投資家ではありませんが、機関投資家のファンドマネージャーやアナリストの人たちとのミーティングなどを通じた実感などから考えてきたことです。そして、個人投資家といってひとつの枠に括るのも考えものですが、勉強している人はプロの投資家にも引けを取らない人も増えていると聞きます。だから、基本的には、個人投資家の人には(全部ではないでしょうが)、私の考えていることは有効ではないかと考えるのです。さて、ここで売り込まれているツールというのは、そのような私の考えでは、役に立たないのです。私の考えているような手法では、それこそ口コミのような一人ひとりとの対話を積み上げようというものですから。だから、そういうツールを売り込むのなら、しかも、IRコンサルが長いというキャリアがあるのなら、私の姿勢は正しくないということを説明してくれても、いいものです。(むしろ、私はそういう議論ができるものと期待していました)それで、ツールを売り込むということをしてほしかったと思いました。

また、百歩譲って、私が自分の姿勢に固執しないとしても、データベースの内容に対しては疑問が多いです。まず、個人投資家のデータベースと言いますが、母集団が疑わしい、この会社は株式ナビという個人投資家向けのサイトを持っているのですが、その登録者が母集団なのでしょうが、その傾向性が分からない。だから、その中でターゲティングしても元々の母集団そのものがターゲティングの対象から漏れてしまう可能性もあるわけです。で、地域や年齢、性別で絞り込むのはいいとして、投資目的で本当に絞り込めるのか。例えば、この会社は投資目的を、投資先の安定性、成長性、配当性向というように分類していたようですが、成長性といっても短期的なものか長期的なものかによって違いますし、仮に配当性向で投資していても成長を望まないわけがない。また、分散投資をしている人は、それぞれの投資銘柄で目的を分けているはずです。だから単純に絞り込めないのです。

そもそも、私の考えでは、いわゆるIR支援会社として、説明会の支援をしますとか、会社説明のツール作成しますとか、この売り込みのようにシステムを売り込むというような、ツール商売というのは、もうこれ以上の将来性はないのではないかと思っています。(これは、後日、別に書きたいです)

というわけで、今回はとても後味の苦い結果となってしまいました。今回の記事は、かなり個人的な事情もあり、読んでも理解しにくいところがあるかもしれません。なかなか整理がつきにくいまま、アップしたことについてはお詫びします。

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