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2011年5月14日 (土)

濱野智史「アーキテクチャの生態系」(1)

Aku 第一章 アーキテクチャの生態系とは?

本書の分析する対象は、2000年代に登場したネットコミュニティやウェブサービス、具体的にはグーグル、2ちゃんねる、はてなダイアリー、ミクシィ、ユーチューブ、ニコニコ動画です。しかし、大事なのは何を追うのかではないのではなく、如何にして追うのかということです。すなわち、これらを「メディア」として捉えるのではなく、「アーキテクチャ」として捉えます。著者はこの言葉を、ネット上のサービスやツールをある種の「建築」とみなす、あるいはその設計の「構造」に着目するという意味で用いるとしています。ネット上のウェブサービスもまた、情報技術によって設計・構築された、人々の行動を制御する「アーキテクチャ」とみなすことができる。言い換えれば、ウェブサービスは複数の人々が何らかの行動や相互行為を取ることができる「場」のようなものと捉えることができる。

では、「アーキテクチャ」という概念の内容について本章で検討する。ローレンス・レッシングによれば、規範(慣習)・法律・市場に並ぶ、人の行動や社会秩序を規制するための方法といい「環境管理型権力」とも概念化されている。具体例でいうと、飲酒運転を規制するには道路交通法上の罰金や減点のような処分が決められていますが、これは「法律」による規制、それだけでは飲酒運転をする者が絶えないため、自動車にアルコールの検知機能を設置し、飲酒している場合にはエンジンがかからないようにするという、飲酒することが、そのまま運転することができなくなることに直結させてしまうという規制が「アーキテクチャ」に当たる。そもそも規範や法律という規制方法が有効に働くためには、規制される側が、その価値観やルールを事前に内面化するプロセスが必要になるが、「アーキテクチャ」は、規制される側がどんな考えや価値観の持ち主であろうと、技術的に、あるいは物理的に、その行為の可能性を封じてしまうという規制である。さらに、レッシングはアーキテクチャの特徴として、規制されている側がその規制を存在自体に気づかず、密かにコントロールされてしまう、ということを付け加えている。これを要約すると、次のようになる。

      任意の行為の可能性を「物理的」に封じてしまうため、ルールや価値観を被規制者の側に内面化させるプロセスを必要としない。

      その規制の存在を気づかせることなく、被規制者が「無意識」のうちに規制を働きかけることが可能。

という2点にまとめられる。さらに付け加えておけば、1点目の特徴は、時間が経過するにつれて、2点目の特徴を帯びるようになる。先ほどの例ならば、アルコール検出装置は、ある日突然、いつも通っていた道に壁ができるようなもので、それまで存在しなかった規制が登場するわけで、規制される側はそれをうっとうしいと感じる。しかし、その規制が登場してからしばらくの年月が経つと、それは「物理的」な制約から「自然」な制約に変質する。つまり、規制がはじめから存在しているという世代から見れば、それは自然なことになっているわけだ。

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