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2011年6月21日 (火)

渡辺二郎「ハイデッガーの実存思想」(1)

Jirou これから、少し長くなるので、途中休みを挟みながら、断続的にアップしていきたいと思います。

第1章 実存に基づく存在の哲学

第1節 ハイデッガー研究の態度と問題点

1.ハイデッガー研究の態度

ひとつの哲学史的対象を研究するとは、その思想の見えざる糸をたぐりつつ、それを破壊的に再構成することである。(これにディルタイの見解を適用すれば)一人の哲学者が彼の生と体験の只中から構成した一つの思想的表現世界を、その与えられた構成を取毀し、破壊することによって、もう一度その見えざる内面的連関を追体験し、そのことによって、同時に、己れ自ら生の中に環帰し、我々自身の内面的世界へと振り戻って、その中から、今一度、その思想の存在理由ないし生成理由を与え返すということこそ、解釈というものの真の姿である、ということになる。再構成するとは、与えられた構成を取毀し、我々自らの生の内面に還帰し、そこからその思想体系の理由づけを与え返すことによって、その思想を真のあるべき構成の中に蘇らしめるということでなければならないのである。我々は哲学史的研究を行うに当たっては、ある思想の表現の底の見えざる糸を辿りつつ、その思想の産まれ出た根源の、そして我々自らもがその中に置かれている、ある人間的生と体験の世界に振り戻って、その生の内面への省察の中から、その思想の存在理由をもう一度与え返すことによって、それを破壊的に再構成する、という態度を採らなければならないように思われる。

以上のような方法路的議論によって。重要な結論が帰結してくる。というのは、我々は最初ハイデッガーの哲学史的研究をなすと言ったが、実は我々はハイデッガー哲学という一つの哲学史的対象を破壊的に再構成することによって、常に同時に、哲学史的世界を超え出、哲学する我々自らの生の中にはね返され、振り戻されるということなのである。即ち思想の研究は、思想自体がそこから発生した生そのものの中へと我々を連れてゆき、その生の中から、思想の方向づけを与えることを、我々に要求する。我々は思想から生へと還帰するのである。

このことをもう少し別様に言い換えてみよう。我々は最初、哲学史の世界、哲学的諸見解の遺産、そういうものの記録された世界、即ち出来上がった哲学の記録の中に、そういう意味での哲学史の中にいる。しかし、第二に、それの再構成に向かうとき、必然的に我々は、我々をもまたその思想家をも包んだ、一つの生の内面へと連れ戻される。その生の内面へ沈潜し、そこからその思想の理由づけを与え返そうとする。その生の内面は、一方で明るく澄んだロゴス的世界をもち、他方で暗いパトス的側面を含み、両者の交錯、流動の中に、我々は容易に捉え難いものとして、いつも我々を取り巻き、我々を揺さぶり、我々自身がその中にいる生というものが、拡がっているのである。我々はこの生を凝視し、そこからその思想の存在理由を与え返そうとするのである。しかし、第三に、我々は、こうして生の内包世界を凝視しながら、まさしく、そのようにして哲学しながら、生存している。我々は、哲学するという生起─歴史の中にいる。ここで我々は、第一の意味とは違ったものとして哲学史の世界にいるわけである。そしてここでは、このような哲学する我々自らの生存ないしは言ってみれば実存は、遂に思想の世界に組み尽くされ得ぬ根源として、そこから脱落し、また脱落した実存の根拠の上に立って、我々はある思想体系を再構成しつつ哲学するのである。我々は生というものの只中に立って生を了解し思索しようとする。生を生から了解するというそのときの校舎の生は、ついに了解の次元から脱落する。なぜならそれが生の了解を可能ならしめるその当のものだからである。我々は、最終的には、常にこの究極の生そのものの只中にはね返され、そこに立って哲学することを行っているのであり、また哲学することは常にこの地点まで還って来ねばならないであろう。

さて我々の方法論的態度の結論はこうである。常に思想から生へ還る運動を背後に秘めながら、ハイデッガー哲学を、その見えざる糸をたぐりつつ、破壊的に再構成し、これを理由づけてみるということである。

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