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2011年6月10日 (金)

苅部直「光の帝国 和辻哲郎」(1)

序章「土下座」をめぐって

本書の課題を著者は、次の点として挙げている。第一の課題として、その原点の一つである和辻哲郎に即して、<日本的なるもの>の生成過程を跡づけようとする。従来の<日本的なるもの>を語る言説が時々の状況で行ってきた問題提起も、それなりの意義を持つはもちろんだが、それが自明視してきた思考枠組みをいったん離れて歴史に切り込むことを通じて、見過ごされてきた様々な問題を星起こしてゆこうというのである。次の課題の台には、和辻哲郎の思想を同時代の思想状況・政治状況の文脈に置いてとらえながら、それが抱えていた問題を再考察することにある。

本書が最終的に目指すのは、和辻哲郎の仕事をたどり、どこに問題があったのか、同時代の言説状況と対比してどういう意義かあったのかを具体的に解き明かすことである。人間の視点から政治の本質を考え、その向かうべきありようを指定することが極めて困難になった現代社会においても、政治活動の公共性や正当性をめぐる問いかけが消え去るわけではない。むしろさまざまな社会運動や制度改革論議の形を取って生き続けていると言える。現代的な諸条件を踏まえたうえで、人間生活の全体に政治をどう新たに位置づけ、政治の意味とその限界をいかに確定するかを考えることは、依然として課題であり続けよう。本書は<人間と政治>をめぐる和辻の思考の跡を、その矛盾や欠落を含めて検証しようとする。これは同時に、和辻が身を置いていた問題圏から、現代人がまだ脱け出していないことの確認作業なのである。

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