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2011年7月14日 (木)

佐々木俊尚「キュレーションの時代─つながりの情報革命が始まる」(11)

このようなアウトサイダー/インサイダーの境界、そしてその境界を設定するキュレーションの方向性は我々を取り巻く情報の海そのものにも適用される概念になっている。情報のノイズの海から、特定のコンテキストを付与することによって、新たな情報を生み出すという存在としてキュレーターが要請されてきている。一次情報を発信することよりも、その情報が持つ意味、その情報が持つ可能性、その情報が持つ「あなただけにとっての価値」そういうコンテキストを付与できる存在の方が重要性を増してきているということなのだ。情報爆発が進み、膨大な情報が我々の周りをアンビエントに取り囲むようになってきている中で、情報そのものと同じぐらいに、そこから情報をフィルタリングするキュレーションの価値が高まってきている。

セマンティックボーダー(言葉の壁)と言う言葉がある。世界の複雑さは無限で、その無限である複雑をすべて自分の世界に取り込むことはできません。ノイズの海と私たちが直接向き合うことは、とうてい不可能だ。だから動物や人間は、様々な情報の壁を設けて、その障壁の内側に自分だけのルールを保っている。言い換えれば、外はノイズの海の中から、自分のルールに則っている情報だけを取り込むようにしている。ノイズの海には様々なルールが無限に存在しているけれど、そこから自分に合ったルールだけを取り出すということをしている。言い換えれば、一人の個人が社会の中で生きていくためには、社会から情報を取り入れることが必要だけれども、社会に存在しているすべての情報を取り込んでしまうと、情報のノイズに埋もれて、どのような変化が社会で起きているかを見通すことができなくなってしまう危険性がある。だからそこに「意味の境界」として、セマンティックボーダーを作らなければならなくなる。つまりは情報のフィルタリングシステムである。これまで述べられてきた「視座」へのチェックインと、その視座を提供する無数のキュレーターという流れに沿って言えば、ソーシャルメディアの世界ではセマンティックボーダーはキュレーターによって絶え間なく組み替えられていく。小さなビオトープの圏域がつくられ、そこにある法則性が生まれ、そのコンテキストに沿ったセマンティックボーダーによって情報は外部から取り入れられていくことになる。キュレーションがノイズの中から情報を取り出し、その情報にコンテキストを付与しているということは、すなわち、それまでアウトサイダーの情報だったものを意味をあたえることによってインサイダーに変換する、というようにセマンティックボーダーを再設定するで、そこに意味を与えている。そこで大切なのは、このセマンティックボーダーが正常に働くためには、二つの要件があることだ。第一は、セマンティックボーダーし常に組み替えられ続けるということ。硬直しないということ。第二は、セマンティックボーダーは内側の論理によってではなく、外部のだれかによって作られるべきだということ。

これは、これまで扱ってきたコンテンツとコンテキスト、そしてコンテキストを生み出すキュレーターの視座と、その視座にチェックインする人々という構造。つまり、第三者であるキュレーターが付与するコンテキストによって、視座は常に組み替えられ、キュレーターがソーシャルメディアの普及の中で無数に立ち上がってくれば来るほど、その視座は無限に拡張されていく。それこそがセマンティックボーダーの組み替えに他ならない。そしてこのセマンティックボーダーの不安定化は「ゆらぎ」を生み出し、その「ゆらぎ」こそがセレンディピティの源泉ということだ。マスメディアにあるパッケージ消費の時代は、「マスメディアが生成した情報だけを読んでいればいい」というセマンティックボーダーが設定されていたが、このボーダーは既に硬直し、内部論理だけによる自閉的で独善的な行き方がマスメディアという組織に起きてしまったからと言える。しかし、2000年ころから、マスメディアが発信した情報と個人が発信した情報の境界線が曖昧になってきた。自己完結的なマスメディア言論は著しく劣化し始めており、専門家ブロガーの言説に対抗できないというようなケースは多く起きている。

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