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2011年7月 1日 (金)

あるIR担当者の雑感(26)~ IRのニッチ戦略(7)

以前に、このような題名で6回に分けて私信を詳らかにしたことがありました。これについては、何人かの方からは真摯なご意見をいただき、たいへん有難く思いました。いただいたご意見について考えてみたり、その後の実務上の諸事などから、以前に書いたものに対して、追加や直しを加えたいという思いが生まれてきました。基本的なところは変わらないと思いますが、何回か、書いていきたいと思います。

以前のIRのニッチ戦略(3)次のようなことを書きました。“IRというのはインベスター・リレイション、つまりは投資家と企業との関係、コミュニケイションです。建前をいえば企業がこのようなことをやろうとしているということを誠意をもって説明し、そのことを十分理解した上で投資家は責任をもって投資するというものでしょうか。そのような理解しあう関係を築いていくことがIRの目的のはずです。”この基本的な考え方は変わっていません。で、以前の論旨では、ここから企業の側から先ず胸襟を開いて見せないと、信頼関係の第一歩が始まらない、という考え方が続きました。

このことは、今も、とても大切なことだと思っています。しかし、これは、あくまでも最初の第一歩ではないかと思うのです。例えば、こういうことです。皆さんの勤めている職場に中途入社で新しい人が入ってきました。その人は、新しい職場に早くとけ込もうと自分はこういう人間なのだということを、進んで“胸襟を開いて”話すようにしました。それはそれで、悪いことではないのでしょうが、これを聞く職場の人たち、つまり、皆さんの側から見るとどうでしょぅか。胸襟を開くのはいいけれど一方的に話されるというのは…、と言う場合もあるのではないか。

ということは、実際のIRの現場に即して具体的に考えてみると、IR説明会などのいわゆるイベントや説明資料やホームページ、決算短信やレポートといったツールというのは、コミュニケイションのための手段、あるいは、コミュニケイションを始めるスタート地点なのではないかということです。よく考えてみれば当然ことです。

以前書いた(1)~(6)もそうですし、日ごろの業務を振り返ってみると、例えば、説明会を成功させるということや、立派な資料を作るというようなことが、ややもすると目的となって(自己目的化)しまいがちではないか、ということです。説明会が成功裏に終わると、それで満足してしまうけれど、これはスタートがよかっただけで、ゴールまでの長い道のりが、その後にあるということを、忘れてしまいがちになることです。

つまりは、企業の側からの情報発信というと、どうしても一方的になってしまいがちで、例えば商品広告などがそうですが、テレビCMや新聞広告が怒涛のように垂れ流しになって、消費者には実質的な選択肢が残されていないという状態になってしまっている。

以前書いた(1)~(6)では、例えばIRの対象をターゲットとして絞るとはいっても、実際にやっていることといえば、上に書いたような一方的な情報垂れ流しというものでした。ここまで書いてきたように実際のコミュニケイションということを考えれば、ターゲッティングされた人というのがどこにいて、そこに向けてどのように情報を投げかけていって、コミュニケイションしていくかという点が考慮していませんでした。それをこれから考えていきたいと思います。

ただし、IRの場合には、企業によって開示している情報量に差がありますが、量の多寡を問わず、このようなことは言い得ると思います。しかし、そもそも開示している情報量そのものが少ない会社の場合は、まずは開示する情報の量そのものを増やすことが先でしょうから。ここで、私が考えているようなことは、ある程度の情報量を開示している企業が考えてもいいのではないかと思うことです。

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