あるIR担当者の雑感(35)~ IRのニッチ戦略(15)
ホームページというコンテンツは、私の考えるIRの手段として限界があるということを前回書きました。これは、かなり不遜な物言いかもしれません。インターネットということを、よく知らないから書けることかもしれません。その点で、私の知らないホームページの機能で、前回かいたような限界を越えてしまうようなものがあれば、ぜひ教えていただきたいと思います。一番求めていることは、投資家と企業がIRという架け橋で一対一のやり取りができるということです。そのために、可能性があると考えているのが、ソーシャルメディアと呼ばれるものです。具体的にはブログ、ツイッター、そしてフェイスブックなどです。実際に、企業の社長がブログを書いていたり、ツイッターで発信しているケースは既に行われています。ただ、どうしてもツイッターの場合には匿名性の原則により、そこで書かれていることが、果たして社長本人か、あるいは本当に会社のことなのかという保証ができないという限界があるように思います。ソフトバンクの孫社長のように有名な人でツイッターも有名であれば、そのような問題は生じないかもしれませんが、私の勤め先のような知名度の少ない企業の場合は、仮にツイッターで見ても、後で、ホームページで情報をもう一度確認するということにもなりかねません。
そこで、可能性を考えているのが、フェイスブックというメディアです。日本の企業でもフェイスブックでの企業ホームページにあたるファンページを開設しているところも増えてきました。しかし、これらはどちらかというと一般消費者向けの商品宣伝やネット販売のページで、IRでやろうとしているところは未だ少ないと思います。IRで使おうとしているところも、とりあえずファンページをつくって、決算短信発表等の情報を載せ始めたというところのようです。だから、これからここに書こうとしていることは、海外では分かりませんが、少なくとも国内では先例が見当たらないもののようです。そのため、見当はずれの内容になるかもしれないことを、予め、お断りしておきます。
フェイスブックの特徴は実名で登録し、フェイスブックの中では実名のやり取りができることです。そして、グーグルのような検索システムが届かないので、フェイスブック内に場を設けておけば、グーグルでは得られない情報に触れる窓口にもなれるということです。
しかし、ネックとして考えられるのはフェイスブックのユーザー数はSMSで最大とはいえ、日本では普及が一部の段階にあること、フェイスブックに登録しているユーザーでも全部が活発に利用しているわけではなく、活発に利用しているのは若い世代におおいことがあげられます。若い世代の場合、特に、ミクシーという国内でのSMSに顕著な傾向なのですが、実際の学校や職場の友人関係がそのままフェイスブックのネットワークに持ち込まれ、そこで頻繁にやり取りをしている傾向にあるらしい。ある社会学者が関係確認のための交信といいましたが、互いにやり取りを交わすことで友人なり同僚なりの関係にあることを確認し合っているので、やり取りの中身は他愛もないものになっている。という傾向です。ただし、これに対しては携帯電話のやり取りと違って、フェイスブックのやり取りは全て履歴にのこり公開されてしまうので、変化の可能性もあるということでした。例えば、そのような履歴を第三者が遡って見ていくことにより、本人の人となりが推測できるとか、アメリカではフェイスブックの履歴が人物調査の参考として扱われているとか、何気ない日常のやり取りだからこそ、当人の本音や人となりが垣間見えるということらしい。
このようなことから、フェイスブック上でのメンバーの交流が、場合によっては深いものになる可能性もある。このような可能来を考え、この一連の投稿で私が考えてきたような、企業の経営の思いを話し、それに共感を得るという可能性を見たわけです。それは、従来のホームページにない双方性の可能性です。また、フェイスブックには登録したメンバーしか入ることができず、グーグルのような検索も使えないため、口コミのような情報の広がりの要素が強いようで、時には、そのような口コミのネットワークに企業の側から一参加者という資格で入っていく可能性も考えられます。
このような可能性としてフェイスブックの利用を具体的に考えています。最初にお話ししました、証券会社などのネットワークに入ってこない人々に出会うためのチャンスとして、このようなフェイスブックにある種の投資家の友人というネットワークの存在の可能性、今はなくても、今後生まれる可能性を見て、そこを開拓してみるということを考えています。
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コメント
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自治体でもツイッターで双方向の情報交換を試みているって、昨日テレビでオンエアしてました。
投稿: Lisa | 2011年7月12日 (火) 01時16分
Lisaさん、ありがとうございます。自治体でも、すでにやっているのですね。そういう自治体のこと、探してみます。きっと参考になると思います。
投稿: czt | 2011年7月13日 (水) 00時32分