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2011年8月 6日 (土)

池田純一「ウェブ×ソーシャル×アメリカ 〈全球時代〉の構想力」(14)

19世後半のイギリスの政治学者、グレアム・ウォーラスは「大きな社会」という考えを示していた。それは、商業と交通のネットワークが国を越えて形成する見えない環境のことだ。1970年代の金本位制の停止と為替相場制への移行によって金融の世界化が進み、多国籍企業が一般化したことを経て、「大きな社会」はグローバリゼーションとして再稼働した。ウォーラスのいう商業と交通のネットワークが稼働する速度を格段に上げたのがネットワーク技術であり、その具体的姿が今日のインターネットだ。その効果として、先進国だけでは経済を回すことができなくなってきている。そのような現状認識は、個々の企業において、商品開発のあり方を変えさせる方向に向かわせる。大なり小なり、世界商品として構想する必要が出てくる。世界商品においては、商品のスペックをグレードダウンさせることが必要な場面も生じる。しばしばオーバースペックを回避する「GoodEnough」という見方が求められる。そこでは、「イノベーション」の意味内容も変容する。

全球として経済を扱うのは、現実にG20という経済体制が当てはまる。G8に新興国が参加することによって、先進国から最貧国までの経済や市場を従来のような断続的なものから連続的なものとして捉えることを可能にする。つまり、先進国と新興国が同一の経済圏として認識される方向になる。そのため先進国市場での常識が通用しないことも出てくる。また、新興国の多くは、先進国と遜色ない生活水準や経済成長を実現する世界都市は内部に抱える一方で、BOPといわれる最貧国的な地域を抱える。ということは、G20というフレームは、新興国を世界経済の運営当事者として組み込むことで、新興国にある先進国的部分と最貧国的部分のすべてが投資の対象となることを意味する。今日BOP市場が単なる開発援助対象ではなく、イノベーションの機会を与えてくれるビジネスの場として捉えられている。最貧国での試みが新興国を媒介とすることで、先進国でも部分的に転用可能であるからだ。イノベーションが、単なる技術の開発や発明と異なり、期待される革新性を持ちえるかどうかは、社会経済の現場で解決しなければならない問題を具体的に認識できるかどうかにかかっている。そこから開発できる社会的コンテキストを浮かび上がらせることができる。さらにサービスという商品は、モノとしての具体的姿を伴わない分、利用される場面が具体化される必要がある。加えてビジネスとして成立するためには、一定の規模が必要になる。多くのBOP市場では、社会経済のインフラをゼロから立ち上げる必要があり、そのため、規模の条件をクリアすることは多い。あとは、そこでいかにして自発的に継続可能な仕組みをデザインするかが課題になる。例えばスマートフォンを巡るアップルとグーグルの競合もG20以後の全球世界の下で繰り広げられている。そこでは、両社の競争を、単純にモバイルのOSを巡る競争、あるいは、対価の回収手段を巡るは競争と捉えるだけでは足りない。BOP市場においては、社会経済体制をゼロから立ち上げる創造行為としてモバイルが位置付けられているからだ。PCが普及していない国では、モバイル端末はその人にとって唯一の個人端末になる。対価の支払い方法として追加されるペイメント手段も、銀行やクレジットカードが行き渡っていないところでは、そのまま見えないマネーになる。3Gと無線LANがデュアルで装備されることで最初からデジタルのデータ通信の利用を前提にできる。つまり、G20という枠組みは、こうした「今ある資源で社会をゼロベースで作ったらどうなるのか」という視座を与えてくれる。既にある社会インフラを飛び越えて、機能と経済性に優れた新しい社会インフラを実現することを想像できる。そこでは空想が空想で終わらず、現実に変わりうる。思考実験が同時に現実を変える場面に出くわすことも可能になる。つまり、先進国の社会状況とは異なる設定の下で、「自由な発想」による新たな問題解決の方法が求められる。

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