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2011年8月10日 (水)

池田純一「ウェブ×ソーシャル×アメリカ 〈全球時代〉の構想力」(16)

第8章 Twitterとソーシャル・メディア

Twitterの創業者の一人であるビズ・ストーンは、人々が日々使ってくれる何か価値あるものを作ることが何よりも優先すると語っている。つまり、価値の創造・提供がかれらのビジネスの最優先事項であるという発想だ。普通なら価値よりも利益、そのための価格が優先される。このことからすると彼の考え方は常識からずれている。ストーンの考え方は視点=次元を異にしているように思われる。それは、ウェブが既に世界的広がりを持つことや、Twitterがソーシャル・ネットワークと呼ばれるサービスの一つであることも関連している。ソーシャル・ネットワークは世界中で既に億を超える人が利用し、国境の存在によらず、人々の繋がりやコミュニケーションを促すことがその役割となっている。注目すべきは、登録ユーザーが増えればユーザー間の潜在的交流可能性も増大することだ。これは、例えば、商品を販売するサイトで顧客数が増えることとは決定的に異なる。それは、ウェブに接続する端末の向こうにいる人たち同士が何かを行うための媒介として機能するのが、ソーシャル・ネットワークだからだ。

ウェブの世界でよく聞かれる言葉に「マネタイズ」がある。欧米では、ウェブ上で立ち上げられたサービスでユーザーの支持を得られたものをどう金銭的価値に実現していくか、という文脈で使われる。つまり、多数のユーザーが利用するに行ったという事実から、そのサービスには何らかの価値があることが疑いえなくなった段階で、その価値をどうやって金銭の尺度=価格として評価し、収益とするか、ということだ。マネタイズで重要なことは、「人々がこれは大事だと感じる」何かを生み出すことであり、その何かへの賛同をユーザー登録という形で支持票として得ていくことだ。何らかの価値を現出させることが先決で、その価値を経済的に支え、かつ、再生可能にするための方法に頭を捻るところがマネタイズのポイントだ。しかし、突き詰めると人間関係の維持と拡大を支援する「場」でしかないソーシャル・ネットワークでは、提供される価値をこれだと特定して言い当てることが困難であり、この点で、マネタイズの問題のいわば極北にあると思われる。その一方で、ソーシャル・ネットワークの場合、ユーザーを増やせば、自ずからその社会的影響力は増す。数億人のネットワークに瞬時に情報を伝えられる経路を持っていることの影響力は計り知れない。

ところで、場を作ることは本質的に利用者と共に行う協働事業である。そのため、その維持のためには、利用時に直接的に対価を支払う方法はそぐわない。何らかの形で「場の維持」そのものをファイナンスする仕組みが必要になる。つまり、贈与性との関わりがどうしても必要になる。ここでは、あるサービスの受容・享受とそれへの対価の支払いの間に時差が生じることぐらいに緩く考えておくことにする。要するに単純な等価交換の否定で、非等価ないし不等価の交換というイメージだ。金銭を経由せずにやり取りするものは、結局、それを等価な交換と見るかは、それを受け取る側の判断に委ねられている。そのことが前面に出てくるのが贈与性のある世界だ。従来であれば、「場」を支える経済的方法は、一つには税金であり、一つには広告であった。いずれも、「場」という存在の受益者と支払者の間にずれがあり、享受しているサービスと対価の間に直接的な関連性はない。しかし、広告の贈与性が維持できたのは、広告行為に直接の効果や受容者の特定のような要素を求められなかった時代に限られる。

ここでfacebookTwitterを対比的に捉えてみよう。おそらく、最も大きな違いはfacebookが顕名+承認制であり、Twitterが匿名+ブロック性であるところだろう。そこから、facebookがグローバル・ビレッジとして、Twitterをソーシャル・メディアとして捉えることができる。Facebookは、第5章で触れたように、もともと顕名の排他的な会員制クラブとしてスタートした。顕名制であるがゆえに、従来の社会生活に伴う社会的制約までもがfacebook内の関係性のルールとして持ち込まれている。Facebookは第一に実社会における社交関係の投影としてのサービスだ。現状でもfacebookは、既に紐帯関係を築いている人々によるコミュニティであり、その緩やかな集積は「街」のようなものだ。その規模が巨大になることで街はグローバル・ビレッジの様相を呈することになる。

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