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2011年9月10日 (土)

下川浩一「自動車産業の危機と再生の構造」(13)

2.日印メーカーの動向と基本戦略

インドの自動車のメーカー構成は乗用車ではマルチ・スズキ・インディア、現代自動車、タタ・モータースの順で、商用車ではタタ・モータースがトップである。

タタ・モータースの超廉価車「ナノ」については、超低価格の実現には次の七つの要因があり、その相乗効果によるという、先ず第一に、徹底した小型化・機能絞込みによる製品開発・材料・生産コストの削減を行っていることだ。第二の要因は徹底したインド開発資源の活用、とくに基本設計にまで遡った開発の見直しと、インドでのVA(価値分析)/VE(価値工学)による製品・部品開発・生産コストの削減があげられる。第三の要因として、徹底した外注化によるリスク分散と生産コストの削減である。第四の要因は、セカンドソーシング制度による部品受注競争常態化を通じたコスト削減である。このセカンドソーシングはタタ独自の方式で、直接取引するサプライヤーとは別にセカンドソーシング先を決定し、納入準備させておく制度で、直接取引するサプライヤーに対する牽制とコスト削減に寄与するという。日本では系列取引ではあっても複数発注というサプライヤーの能力を競わせるやり方があるが、こりセカンドソーシングはもっと徹底した牽制作用が働く。つまり、タタ・モータースのサプライヤーになる可能性を認めてもらえて、無規制のサプライヤーに技術力で取って代わるというインセンティブとモチベーションが同時に働くのである。第五の要因として、サプライヤーパークによる部品流通コストの削減。第六に大規模生産計画を背景にしたサプライヤーのマージン率の半分ないし三分の一への削減、第七に大需要地域での組立生産を通じたせいひん物流コスト、といった要因が相互に絡んで超低価格を可能にしている。要するにタタ「ナノ」は、基本設計と組立生産工程に力を注ぎ、それ以外はできるだけサプライヤーに任せ、彼らを相互に競わせて競争力を高め、かつ最新技術の移転を速いスピードで実現しようというものである。そのために大ロットでの受注の可能性をちらつかせ、マージン率を下げても互いにwin-winの関係になる条件を追求しようとする。これを実現するには、サプライヤーに何でも丸投げするだけでは不十分で、高い設計能力とVA/VEの評価能力がともなわなくてはない。

インドに限らずホンダは、特に中東南アジアや南米、アフリカなどの途上国では二輪車の現地生産からスタートし、それから四輪車事業を展開するパターンを取っていることが多い。二輪車事業と四輪車事業は決して同一ではないが、二輪車事業で先行していることは、部品の現地調達の拡大や現地サプライヤーの力量の評価、現地の労働慣行や人材育成など、多くの経験と知識が得られるというメリットがあることは間違いない。

トヨタは、インドに限らず様々な国で挫折を経験し、時には撤退を考えたことが再三ある。北米への輸出で失敗したこともあるし、北米の現地生産でもホンダや日産に遅れをとった。ブラジル、オーストリア、そしてトルコで撤退を考えたこともあったが、いずれも踏みとどまって何とか採算に乗せてきた。このようにさまざまな挫折や失敗から多くを学び、まさに学習する組織となって、その結果、組織能力を進化させてきた。

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