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2011年9月18日 (日)

港徹雄「日本のものづくり 競争力基盤の変遷」(4)

1章 競争力基盤と国際分業

1.国際競争力のランキング

日本の国際競争力の低評価の原因は、政権の不安定性、財政赤字及び効率の税額などによると指摘されている。

2.伝統的貿易理論

何が国の国際分業(貿易)パターンを規定するのかという問題は、古くから多くの経済学者によって研究されてきた。

1817年のデビット・リカードの『経済学および課税の原理』において、たとえ生産コストの面で絶対的な優位な産業がなくても、相対的に優位性があれば国際分業の利益が存在することを示した。この比較優位論に根本的修正を加えたのが、ヘクシャー=オリーンの国際分業論であった。各国の生産要素(土地、労働、資本)の賦与状態の相違が国際分業の要因であるした。即ち、ある生産要素、例えば労働が豊富に賦存している国ではその投入コストである賃金率は低くなるから、労働という生産要素を多く投入する材の生産コストは低くなる。そのため労働集約型産業が比較優位産業になると説明した。

3.産業製貿易と新貿易論

1970年代、欧米諸国や日本等先進経済諸国では、いずれの国でも自動車や電気機器等組立型機械産業が高度に発展し、その生産能力が拡大した。そして先進諸国で、同一の産業カテゴリーに属する製品の輸出と輸入とが同時に行われるという産業内貿易が活発化した。

ポール・クルーグマンは、1979年に規模の経済性を享受する生産規模の大きな企業が、規模の経済性を享受しえない企業を淘汰して独占的競争状態となること。そして国内市場競争で勝ち残った企業は生産規模をさらに拡大することによって、その生産コストが輸出に伴う輸送費用を差し引いてもなお国際的な価格競争力が獲得できるまでに低下させることができるとした。つまり、貿易は、技術や生産要素賦存の国際的な相違を必要とするものではなく、それに替わって、貿易は単に市場を拡大し規模の経済性を享受させるものであり、この貿易の効果は労働力の増加及び地域的な産業集積がもたらす効果と同様である。さらに、クルーグマンは1980年に、同一産業内で国際貿易が行われる理由として、自由貿易によって市場規模が拡大し、生産規模が一層拡大した輸出企業ではその製品ラインを多様化することが可能となる。他方、経済成長によって豊かになった消費者は、差別化されバラエティに富んだ商品群の中から選択することにより大きな効用を得ようとするようになる。この結果。消費者は同一の商品群の中から、購入する商品であっても、輸入された商品群と国内メーカーの商品群の中から、購入する商品を自由に選択するようになる。このように独占的競争と製品差別化とが今日の先進国間貿易の主流である産業内貿易の要因であるとした。この理論は特定国の大企業によって生産された製品が貿易市場を支配する可能性を示唆している。

4.企業間生産性格差と「新々貿易理論」

企業データを用いた分析によって、輸出産業に属する企業でも、過半の企業が輸出を行っておらず、相対的に生産性の高い企業だけが輸出を行っていること、また、輸出を行うことによって企業レベルおよび産業レベルで生産性が上昇することが実証されるようになった。

また、統一産業部門に属する企業であっても、輸出や海外直接投資を行っている国際化された企業と、輸出や海外直接投資を行っていない非国際化企業とが併存している事実を説明する理論として新々貿易理論が登場した。メリッツは2003年に、同一の産業内に生産性の異なった異質な企業が存在することを前提に、生産性の高さによって国内市場に製品を供給する企業にとどまるものと、輸出を行う企業とに分かれ、生産性の最も低い企業は退出を余儀なくされるとする貿易モデルを提起した。このように生産性の高い企業だけが輸出企業化する理由として、高生産性企業だけが輸出チャネル形成等に必要とされる固定的な輸出コストを支払うことが可能であることを指摘している。

このように新々貿易理論では、企業の生産性格差を国際化企業と非国際化企業とが併存する主要因としている。しかし、これらの理論では輸出企業の生産性が非輸出企業の生産性に比較して高いという事実を確認しているが、企業間の生産性格差がどのような要因によって派生するのかについては、直接的には論じられていない。

5.新々貿易理論の実証研究

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