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2011年9月14日 (水)

下川浩一「自動車産業の危機と再生の構造」(16)

終章 日本自動車産業再生の道

今、日本の自動車メーカーは、世界的金融危機と世界同時不況の急襲を受けて、未曽有のリストラの最中にある。これまで最大の収益源であり、金城湯地としてきた北米市場が縮小均衡に向かう中で、日本の自動車メーカーは、今後いかにして再生を図ることができるのであろうか。

この中で日本の自動車メーカーの再生は、まず、既に進行している通り、国内、海外の大量減産と海外工場の増設延期、ないしは新工場増設の見直しである。当面は雇用を含めたリストラと減産で、過剰生産と過剰在庫体質の一掃を図り、七割ないし六割操業で採算が取れる「筋肉体質」の実現を追求することが求められる。この筋肉体質の実現には、一層のフレキシブル生産の強化と、派遣労働に安易に頼らない高度な多能工育成と、それによる海外工場のサポートが必要である。

今後を展望すると、日本の自動車メーカーは、為替相場の変動の影響を受けにくい体質を確立しつつ、何にもまして環境技術で世界をリードすることが求められる。特にビッグスリー崩壊後は、北米市場で主役に躍り出る可能性も高い。場合によっては、国内の工場の生産能力を減らしてでも、海外工場の強化拡充と自立化を促進せねばならないであろうし、質の高い先行開発とそれに見合ったレベルの高い生産技術を追求し、世界に冠たる環境技術に挑戦していく必要がある。この二つの重要課題に挑戦する上でカギを握るのは、海外要員と、これをサポートできる質の高い人材開発と、そのための中長期の人材開発戦略である。真の質の高い人づくりこそ、これからの基本課題とあるとの前提に立って、人材開発戦略を急がねばならない。

この危機を何とか乗り切ることができたなら、その後には、北米市場におけるビッグスリーの縮小均衡に伴う勢力変化が起こる。そうした事態に備えることも、今から考えておくべきだ。これまでの日本の自動車メーカーは、北米の現地工場が利益を上げ、これによって曲がりなりにも日本国内、輸出、そして海外現地工場の三位一体の為替フリーの体質に近づいたとされていたが、今後は海外生産に今まで以上に力を入れることで為替フリーのグローバル生産体制確立という挑戦に活路を見出すしか、この危機を乗り切る妙策はない。そして、中長期的には新興国市場の自動車産業が世界をリードする時代がやってくる。それは予想以上に早まる可能性がある。しかもその基本動向は、世界一を誇った北米市場をあてにしたグローバルな所得移転ではなく、中国、インド、ASEANなどの中産階級の形成による内需の底上げによってもたらされる。となると、グローバルな新興需要に応えられる超廉価小型車や自動車関連の環境技術が何を置いても必要になる。特に環境技術は先進国だけでなく、新興国や途上国にも差し迫った課題になりつつある。

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