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2011年9月14日 (水)

あるIR担当者の雑感(49)~レポートを書いてもらったら?

何か、レポートを書かれたことを再三話題にしているので、しつこいと思われるかもしれません。まあ、それほど、担当者としては嬉しかったということで、また、我慢してお付き合いください。

アナリストの方から、出来上がったレポートを送っていただき、何度も読み返しているうちに、これを、もっと生かすことを考えたいと思いました。せっかくアナリストの方が努力を重ねて書いてくれたものです。担当者としても、それに応えるべくそりなりの努力は、やはり、してきたつもりです。これをもっと活用したいと考えるのは自然なことではないかと思います。取敢えず、担当取締役や社長、経理関係者などには写しを配布しました。

で、そのために、何か参考になるようなものはないかと探してみました。そして、結果から言うと、この数日間いろいろと探しましたが、全く参考となるようなものは見つかりませんでした。「アナリストにレポートを書いてもうためには、どうしたらいいか」というセミナーはよく行われているようですが、その後のレポートを書かれた後では何をどうするのがよいか、というセミナーは見つかりませんでした。レポートを書かれる会社は上場会社のなかでも限られているので、このようなセミナーは集客の可能性が低いというのか、このようなテーマ自体が、そもそもセミナーの対象とならないのか、分かりませんが。

各発行会社では、どうしているのでしょうか。私の勤め先のようなところはレポートを書かれるということが大事件なので、こうして大騒ぎしているのですが、有名大企業では日常的にレポートが書かれるようなので、そのこと自体、あまり騒がないということでしょうか。他の会社のことは、よく分からないのですが。

何かのアクションを起こして、ひとつの結果がでたところでその結果に対する検証などのフィードバックを求めるのは、ビジネスでは同然のことですし、結果に付加価値がついてきたとすれば、それを利用するということで、サイクルを回すというのは、あたりまえのことです。先日出席したIRセミナーでは、アナリストにレポートを書いてもらう、ということを目標の一つとして扱っていましたが、その出た結果に対して、どうするかという視点はなかったようでした。

で、参考となるようなものもないので、ビジネスの基本から自分なり、この場合はどうしていくのかを手探りで考えながら、やろうとしています。

そのひとつは、敢えて考えるまでもなく、今まで、企業の側から情報を発信してきたことに対して、アナリスト・レポートという形に残るものが返ってきたということで、これまでの情報発信の検証ができるということです。例えば、新規事業への期待の大きさとか、既存の事業で現在は苦戦している状態の事業に対する関心が会社が考える以上に高かったということ等が具体的に分りました。これにより、今後の情報発信の方向性を軌道修正していく必要性を理解できました。これは、情報発信だけに限ることではなくて、市場から会社が考えている以上に関心が示されているということは、会社が気づいていないところで事業に可能性があるかもしれない、ということになれば事業戦略について軌道修正もあり得るということになります。これは、今後のIR活動、それだけでなく企業活動を続けていくために、とても重要なフィードバックです。よくレポートを書いてもらえる会社は、こういうフィードバックによる検証作業を頻繁でできるので、IR活動なども軌道が大きくずれることもなく続けていく安全弁が備わっているようなもので、うらやましく思います。

これに関連して、IRの担当者レベルでは、取材を受けているので、取材されたことがどのようにレポートに書かれたかを追跡できるということです。多分、複数のアナリストにレポートを書かれている会社では、それぞれのアナリストの個性の違いも把握できるのではないでしょうか。そうするときめ細かなコミュニケーションが可能となります。そして、何よりも、アナリストを投資家と企業をつなぐ窓口と考えると、これまで企業からの一方的だった情報開示に対してレポートという形に残るもので返答があった、ということで双方向性の道が少し広がったということです。アナリストという人間が会社に興味を持ってくれたからこそ取材をして、企業の魅力や可能性を見出したからこそ企業の投資価値を認めレポートを書いてくれたということは、言ってみれば投資家ならば、ファンになってくれていると考えてもいいのではないか(レポートを書いてくれたアナリストの人には叱られそうですが)。こう考えると、アナリストレポートは企業がファンをつくり、広げていくための試金石、フロントランナーとも考えられるわけです。

今度は、違った側面から考えてみます。それはレポートを書いてもらった企業の側で、例えば、社員がこのレポートを読むということです。ある会社では株主通信を社員に配布しているそうですが、レポートは外部の客観的な目で、その企業を分析したものです。社員というのは、ほとんどの場合、日頃会社の中にいて、会社というものを、とくに全体像を鳥瞰的に見るということがないのです。だから、こういうレポートで改めて、自分の会社はこういう会社だったのか、ということが分かるわけです。実際、今回、レポートを一部の社員に見せたところ、そういう反応をする人が多かったです。これは、企業が社外への情報発信という点だけでなく、企業内部の社員たちを対象とした企業アイデンティティ(というと大袈裟ですが)に資するものではないか、と思いました。だから、こういう方向でレポートを活かす可能性は高いと思います。

まだ、これ以外にも私の気づいていないところで、可能性は沢山あるのではないかと思います。

レポートを書いていただいたということで、これを活かしていくという新たな課題が出てきました。IRという仕事は、拡大再生産というのか、発展性があるというのか、どんどん広がっていくものだということを感じました。

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